KDDIが「IoT世界基盤」でグローバル企業を支援、産業分野で日立の「Lumada」と連携を開始

KDDIは6月7日、クルマや産業機械などグローバルで事業を展開する企業のIoT活用を支援するため、企業の海外拠点におけるIoTの通信接続からサービス展開、データ分析までを提供する「IoT世界基盤」を構築し、2019年度の商用化を目指すと発表した。

KDDIはこの取り組みにおいて2016年からトヨタとの協業を進めていたが、今回新たに日立との協業を発表。日立が展開するIoTプラットフォーム「Lumada」と連携していくとした。

KDDIと日立は6月7日、同件に関して共同記者会見を開催し、その概要を説明した。

【登壇者】
・KDDI株式会社 取締役執行役員常務 森敬一氏(トップ画像・左)
・株式会社日立製作所 執行役常務 社会ビジネスユニットCEO 永野勝也氏(トップ画像・右)

2016年よりトヨタと”つながるクルマ”を推進

KDDI、海外拠点のIoT活用を支援する「IoT世界基盤」を発表、産業分野で日立の「Lumada」と連携
2016年6月、KDDIとトヨタは「つながるクルマ」のグローバル通信プラットフォーム構築に向け協業を開始した。

昨今、IoTの普及に伴い、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するためのデバイスやプラットフォームが充実してきている。

しかし、グローバルに事業を展開する企業が、複数の国を跨ってそれらを活用する際にネックとなるのが、通信ネットワークだ。

海外でIoT機器を無線ネットワークにつなげる場合には、国内からのローミング接続を行うか、各国の通信キャリアと個別交渉して回線契約を結ぶ必要がある。

しかし、その場合にはコストが高い、あるいはセキュリティが不安といった問題から、企業がIoTの活用を断念してしまう場合も少なくないという。

KDDIとトヨタは、世界におけるクルマの「つながる化」(ネットワーク化)を推進するため、現状では国や地域で仕様が異なっている車載通信機(データ・コミュニケーション・モジュール:DCM)を、2019年までにグローバルで共通化することを目指し、2016年6月より協業を開始。

車載器に内蔵されたeSIMの設定情報を遠隔で書き換え、KDDIが選定した現地キャリアへの直接属を可能にする、「グローバル通信プラットフォーム」の構築を進めてきた。

そこで今回、KDDIはトヨタと構築した同IoT基盤を、今後は産業機械や建設機械など他の産業にも展開するとして、「IoT世界基盤」として発表した。

3つのレイヤーからなる「IoT世界基盤」

KDDI、海外拠点のIoT活用を支援する「IoT世界基盤」を発表、産業分野で日立の「Lumada」と連携
KDDIが発表した「IoT世界基盤」のイメージ図。①世界への拡がり②市場の拡がり③価値の拡がりの3層から構成される。

KDDIの取締役執行役員常務である森敬一氏は、「IoT世界基盤」の特徴として①世界への拡がり、②市場の拡がり、③価値の拡がりの3点をあげた(上図)。

①「世界への拡がり」においては、ネットワークの回線、課金管理、キャリア切替、一括運用を可能にする「グローバル通信プラットフォーム」が中核となる。

「2019年度の商用化に向け、同基盤の対象国を世界50カ国以上に拡大する」と森氏は述べた。50カ国に展開すると、日本に本拠を持つ海外現地法人の9割以上をカバーできるという。

また、同基盤は従来のローミングと比較して、「通信速度・容量」、「セキュリティ」、「コスト」、「回線管理・運用」などすべての面で優位性があるとしている。ローミングコストに関しては、半額程度にできるということだ。

③「価値の拡がり」については、ネットワークのレイヤーのみならず、データ分析などの機能も包括的に提供。KDDI独自のプラットフォームだけではなく、パートナー企業との連携により、多様なアプリケーションを提供していくという。

日立と協業し、顧客と市場の拡大を目指す

KDDI、海外拠点のIoT活用を支援する「IoT世界基盤」を発表、産業分野で日立の「Lumada」と連携
KDDIと日立は協業により、通信事業者や顧客の早期拡大を目指す。

KDDIは同日、「IoT世界基盤」において日立と協業することを発表した。

「IoTの分野においては、パートナー企業と一緒に新しい価値を創造していくことが重要だ。そこで今回、強力なパートナーである日立と協業する」とKDDIの森氏は述べた。

具体的には、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」と連携する。

Lumadaは、日立が製造業として培ってきたOT(制御・運用技術)とAIやビッグデータ分析などのIT技術を合せたIoTプラットフォーム。国内外で500件以上のユースケースを生み出しているという。

同協業においては、プラットフォームの連携を行うだけではなく、日立のコア技術を活用してさまざまな産業や設備からデータ収集を可能にし、一体となって顧客拡大を目指す狙いがある。

KDDI、海外拠点のIoT活用を支援する「IoT世界基盤」を発表、産業分野で日立の「Lumada」と連携
日立はKDDIの「IoT世界基盤」との連携により、顧客のグローバルバリューチェーン全体の最適化をはかるとしている。

一方、日立側のメリットは、日立製の機械やソリューションを提供するグローバル企業に対し、一元化されたネットワーク管理によって顧客のバリューチェーン全体の最適化をはかれることだ。

「これまでのIoTでは、つながっているモノのデータ活用が中心であり、生産現場ではまだまだ通信の制限があってIoTが難しい分野がある。今後は、KDDIとの連携により、そうした分野へも展開していきたい」と日立の執行役常務 社会ビジネスユニットCEO 永野勝也氏は述べた。

7月より実証実験を開始、ターゲットは日立製の産業機器

協業の第1弾として、2018年から株式会社日立産機システムがグローバル展開する産業用インクジェットプリンターにおいて、「グローバル通信プラットフォーム」を試験導入する。

KDDI、海外拠点のIoT活用を支援する「IoT世界基盤」を発表、産業分野で日立の「Lumada」と連携
2018年7月より、KDDIの「グローバル通信プラットフォーム」を、日立産機製の産業用インクジェットプリンターに試験導入

同製品は、食品や薬品、化粧品の容器に製造年月日やロット番号などを印字する機器。顧客先での安定稼働を支援するため、遠隔モニタリングサービスを提供してきたが、通信環境の面で課題があったという。

そこで、KDDIが提供するプラットフォームを活用することで、セキュアでグローバル共通のネットワーク環境を顧客に提供していくという。

なお、「IoT世界基盤」についてKDDIの森氏は、「日系企業に限らず、海外に本拠を置く企業にも対応できるしくみだ。ただ、まずは課題を抱えている日本企業への展開を進めていきたい」としている。

【関連リンク】
ケイディーディーアイ(KDDI)
日立(HITACHI)

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