5Gは、高速・大容量通信・低遅延通信が期待されていることから、より高度な信号処理の計算が求められている。例えば、より高速な通信を行うために、通信速度を高速化する技術「MIMO(Multi-Input Multi-Output)」が導入されており、このMIMOの数を増やして通信容量を倍増すると、処理が必要なデータ量は2乗で増加する一方、より高い周波数を用いる5Gでは短い処理時間が求められる。
これまでの仮想化無線ネットワーク「vRAN(virtualized Radio Access Network)」の設計では5Gの通信性能を十分に発揮できないという課題があり、近年ではアクセラレータ(※1)を活用して、処理速度を向上させるといった研究開発が進められている。
ソフトバンク株式会社は、NVIDIA CorporationのGPU(Graphic Processing Unit)(※2)を活用して仮想化した5Gの基地局(以下、5G vRAN)の技術検証を実施した。
NVIDIA Aerialは、O-RAN Alliance(※3)で規定される業界基準に準拠しており、5Gの基地局の汎用化や仮想化に対して親和性のあるソフトウエアである。ハードウエアの進化に伴って新たな開発をすることなく、Massive MIMOによる周波数の有効利用など通信性能の向上と消費電力の抑制の両方を可能にする。そのため、仮想化による柔軟性を損なうことなく、高速のネットワークを構築することができる。
GPUは汎用性が高く、MEC(Mobile Edge Computing)との親和性も高いため、AIによる画像解析やVR、ARなどの低遅延かつ複雑な処理を必要とするアプリケーションを、高速に動作させることができる。
今回の検証内容では、GPUを活用した5G vRAN向けソフトウエア「NVIDIA Aerial」の性能を検証するため、上りおよび下りのデータ通信をシミュレーションし、処理速度と消費電力を測定した。その結果、NVIDIA Aerialを活用した5G vRANソリューションは、5Gの通信性能を十分に発揮する上で求められる短い処理時間を満たすとともに、消費電力を抑えることができた。
※1 アクセラレータ:汎用プロセッサー(CPU)上で高速に動作させるのが難しい特定の処理に特化し、高速に処理することを支援するハードウエア。
※2 GPU:汎用的な並列計算が可能という特長を生かして、画像解析などの処理を高速で実行できる半導体。
※3 O-RAN Alliance:Open Radio Access Network Alliance。次世代の無線アクセスネットワークの構築を目的に活動している業界団体。
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