5Gの商用サービスが各国で始まる中、さらに超低遅延や多数同時接続といった機能が強化された5G(以下、ポスト5G)は工場や自動車など多様な産業での活用が見込まれており、日本の競争力の核となり得る技術と期待されている。
その一環で、近年は基地局装置のオープン化の動きが活発化しており、O-RAN Alliance(※1)で策定されているO-RANフロントホールインタフェース仕様(※2)により、さまざまな装置ベンダーの基地局無線機(RU:Radio Unit)と制御部(CU/DU:Central Unit/Distributed Unit)を接続することが可能になりつつある。
しかし、異なるベンダーの装置間で相互接続性を迅速に検証するには、検証プロセスの確立、共通で使用できるツールの開発、検証環境の整備などが必要である。
こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、日本電気株式会社(以下、NEC)と富士通株式会社に2020年度から2023年度までの予定で「基地局装置間の相互接続性等の評価・検証技術の研究開発」を委託している。
これを受けてNECと富士通は、異なるベンダーの装置間での相互接続性、および当該接続が情報通信ネットワーク全体に与える影響を評価・検証するための環境構築と技術開発を進めている。
そしてこのほど、両社はポスト5Gに対応した基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性を検証(※3)する技術の研究開発を、NECの英国ラボと富士通の米国ラボで開始することを発表した。
同技術は、FHA(※4)、P-DU(※5)、テストシナリオ抽出ツール(※6)、テストパラメータ変更ツール(※7)、検証結果判定ツール(※8)などの独自技術が含まれる。これらの技術を両社のラボの検証環境に導入することにより、両社以外を含む異なるベンダーの装置間における相互接続性検証の効率化が可能になるという。
英国と米国のラボでは、O-RAN仕様に準拠して標準テストができる適合性試験系(Conformance Test System)や、コアネットワークから端末までの接続検証が可能なエンドツーエンド試験系(E2E Test System)を実施できる。さらに、今回開発する各技術を相互接続性検証に組み込むことで、システム全体の正常性検証や性能検証などを、各国地域・事業者の商用環境に近い条件で効率的に実施可能となる。
※1 O-RAN Alliance(Open Radio Access Network Alliance):O-RAN Allianceは、5Gをはじめとするオープンかつ拡張可能な次世代の無線アクセスネットワーク実現を目指し、標準化を推進する業界団体。
※2 O-RANフロントホールインタフェース:O-RAN Allianceで策定された基地局制御部(CU/DU)と無線機(RU)の間をつなぐオープンインタフェース。
※3 相互接続性検証:基地局を構成する装置間の接続、最大スループット(性能)が出るか、複数のユーザー端末を接続した際でも所望のスループットが出るかなどを評価・検証する。
※4 FHA(FrontHaul Analyzer):O-RAN仕様に準拠したフロントホールプロトコル(M-Plane、CUS-Plane)の正常性を検証する技術。
※5 P-DU(Pseudo-DU):RU単体の正常性を検証する技術。
※6 テストシナリオ抽出ツール:通信事業者によって異なるプロファイルをインプットとして、各5Gネットワークに最適なテストシナリオを自動抽出するツール。
※7 テストパラメータ変更ツール:検証をより効率的に実施するための、各種テストパラメータ自動抽出・変更ツール。
※8 検証結果判定ツール:検証結果の良否を自動判定するツール。
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