5Gの高速大容量通信に使われる4Gより高周波のミリ波帯の電波(24GHz~)は、情報容量が大きい反面、直進性が高く到達距離が短いという特徴がある。そのため建物の陰などのエリアでは電波が遮蔽され、通信品質を確保しにくいという課題があった。また、この課題の解消に向けて基地局や中継機器等を増設する場合は、多額の費用の発生や設置場所の確保といった新たな課題が生じていた。
大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、5Gで使用するミリ波を自在な方向に反射させて、ミリ波の到達エリアを拡げる電波反射板(以下、リフレクトアレイ)を開発した。
同製品は、電波を鏡のように正反射する金属反射板とは異なり、特定の周波数の電波を非対称に反射させることができる電波反射板である。
反射する周波数帯、基地局から受ける電波の入射角、電波を届ける反射角、反射波の広がり方を自由に設定できるため、設置に関する制約条件が少なく、建物の陰などの電波が届きにくい場所の通信環境を改善する。電源も不要なため、設置場所が限定される場合にも対応する。また、すべての電波を反射する金属板とは異なり、対象周波数帯以外の電波は透過させるため、既存電波への影響を軽減する。
さらに、同製品には、所定の周波数帯を選択的に反射して、それ以外の電波を透過する層「周波数選択反射層」と、入反射する電波の方向を決める特殊な誘電体層「反射方向制御層」がある。これら2層を保護するとともに、建装材として求められる耐久性と多様な意匠にも対応するデザインカバー層もあり、この3層で構成されている。
加えて、表面のデザインカバー層に多様な絵柄等を印刷できるため、内装・外装・看板など、多様な外観のデザインを付与する。
同製品を活用することで、スマートファクトリーにおける電波遮蔽物の裏側の通信環境の改善や事業所内や、教育現場など屋内でのモバイル機器の利用環境の改善などが期待できる。
今後DNPは、通信キャリアを含めた各種通信関連会社等と共同で同製品の機能検証などを進め、2023年度からの実用化を目指すとしている。
なお、同製品は電波の反射方向を固定する「パッシブ」タイプのリフレクトアレイであり、今後さらに反射方向を固定しない「アクティブ」タイプについてのDNPと複数社による共同開発は、2021年度の国のプロジェクトでの採択が決定している。
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