KDDIは、5G通信において、5G SA(スタンドアローン)により、「ネットワークスライシング機能」を提供開始すると発表した。
5G SA(スタンドアローン)とは
2020年にリリースされた5G通信だが、現在スマートフォンで受信している通信は、4Gの設備を活用して5Gサービスを提供する、5G NSA(ノン・スタンドアローン)という方式だった。
5G SAの場合、基地局に5Gのコアネットワーク設備を新規に設置していくことで、4Gとの相乗りではなく、5Gだけのサービスを提供することができ、その結果、5Gの特徴的な機能を提供することができるようになるのだ。
ネットワークスライシングとは
ネットワークスライシングとは、通信利用者のユースケースに応じて、通信に必要な各種リソースを仮想的に分割し、独立的なネットワークを提供するということだ。
これを実現するには、コアネットワークと呼ばれる5G通信を実現する仕組み全体が仮想化され、クラウドネイティブな仕組みで提供されることが前提となる。
将来的には、遠隔医療や自動運転などを行うための通信の安定性と品質を、それ専用に確保することがイメージされている。
そのためには、スライシングを提供するユーザのために、SLAに準じた性能を提供する必要があるだけでなく、セキュリティや、通信同士の相互不干渉を確立する必要がある。
AbemaTVでの配信実験
2022年2月21日(月)の20:30-21:30(番組は19:00-)、AbemaTVのABEMAMIXという番組の生中継を5G SAのネットワークスライシング機能を使って行うということだ。
一般的な放送中継では、放送のための専用回線を準備したり、専用の車両を手配する必要があった。
これをモバイル回線で行う場合、モバイル回線を束ねて提供する必要があったのだが、この方式の場合、安定した通信が提供できなかったり、専門的な技術者や機器が必要となっていた。
しかし、5G SAとネットワークスライシングが提供されることで、安定的な品質の映像中継を配信可能としたのだ。
今後は、一般的なSNSのように手軽に動画をアップロードしたり、MEC(Mulitaccess Edge Computing)を活用することで、様々な動画をエッジのレイヤーで切り替えたりしながら配信することも可能になるということだ。
5G通信の可能性
4G基地局に相乗りする形でスタートした5G NSAのサービス。現在、製造業のAGV制御や画像解析AIソリューションなどで様々な産業上での引き合いがでてきている状態だ。
もともと、5Gの価値は、消費者のスマートフォンでの高速通信だけでなく、IoT時代における産業利用が期待されていた。
5Gのコアネットワークが仮想化され、ネットワークスライシングが可能となり、MECを活用することができるようになることで、自動運転や高度な放送など、様々なシーンで5Gの活用が進むようになりそうだ。
なお、スマートフォンで5G SA通信をしたい場合は、SAに対応した端末が必要で、5G SAの本格展開は2024年頃を予定されているとのことだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。