国内における鉄道の運転事故は、長期的には減少しており、特にホームドアの設置により駅での鉄道人身傷害事故は減少傾向にある。一方で、事故種類別でみると踏切障害事故や駅以外での鉄道人身傷害事故が運転事故の3分の1以上を占めており、安全性の向上が課題となっている。
他方、厳しい労働環境や国内の少子高齢化などにより、国内鉄道業界は就業者不足に直面しており、鉄道の安全性を確保するためにも、鉄道現場における自動化や省力化が求められている。また、即時対応が必須となる鉄道運転事故ではリアルタイム性も求められる。
沖電気工業株式会社(以下、OKI)と住友商事株式会社、東急電鉄株式会社は、ローカル5Gを活用した「線路敷地内の安全性向上に関する実証実験」を、2022年12月から2023年3月まで、東急電鉄東横線の菊名駅~妙蓮寺駅間の踏切や線路敷地内にて実施する。
同実証実験では、ローカル5G環境下でカメラとAI画像センシング技術を用いて「踏切滞留監視」と「線路内侵入監視」の2つの実証実験を行う。
踏切滞留監視は、従来3Dセンサー(※)で検知している人、車などの踏切内滞留を、OKIのAIエッジコンピューター「AE2100」と沿線に設置された低照度カメラを用いて映像から自動検知し、運輸司令所および運転士にリアルタイムで通知するもので、運輸司令所には検知した映像の自動表示も行う。
一方の線路内侵入監視は、高速大容量で超低遅延かつ多数同時接続可能というローカル5Gの特長を活かして、線路内に設置された複数の高精細4Kカメラで撮影された映像を遠隔地にあるAI処理サーバーに伝送し、OKIのAI画像解析技術により踏切や駅ホーム、境界柵からの線路内立入を検知し、同様に通知および映像の自動表示を行う。
これらの監視により、踏切や線路敷地内の異常を複数の映像でリアルタイムに確認することができるため、線路敷地内の安全性を向上することが期待できる。
OKIは同実証実験に参加することで、検知の対象範囲を踏切から線路へと広げ、線路上の支障物確認のような新たな機能の追加を検討するとしている。
※ 3Dセンサー:レーザー光の反射によって踏切内の支障物(人、車など)を自動的に検知して、踏切内における異常を列車の運転士へ伝える保安設備のこと。
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