近年IoTソリューションを活用して事業を展開する企業が増加する中、信頼性の高いネットワーク構築のために、複数のキャリアを利用した冗長化を必要とするケースが生まれている。
そうした中、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、主にIoTへの利用を想定しているデータ通信用のSIM「Active Multi-access SIM」の開発に成功した。
「Active Multi-access SIM」は、1枚のSIMでNTT ComおよびTransatelの2つのキャリアを利用でき、一方のキャリアで障害などが発生した際にSIMで自律的にもう一方のキャリアに接続先を切り替えることができる。
このSIMに実装されたアプレットは、インターネット上のホストに対して定期的に通信確認を行うことで、通信が正常に行われているかを監視する。
一定の条件下でメインのキャリアの通信障害を検知すると、予備のキャリアに自動で切り替えを行う。
また、一定時間経過後はメインのキャリアへの切り替えを自動で行う。このため、多数の汎用的な端末にSIMを利用している場合でも、一つ一つ手動でキャリアの切り替えを行う必要はない。
通信状態の監視や切り替えに関する機能を内包しているため、端末側には監視や切り替えの機能が不要だ。そのため、機種に依存することなく利用することができる。
ただし、機種によっては標準で規定されたコマンドなどの一部または全部に対応しておらず、正常に動作しない場合があるため、今後、ユーザにて動作確認を行える枠組みや、動作確認済機種リストの公開などを検討していくという。
さらに、「Active Multi-access SIM」では、NTT Comの独自技術である「アプレット領域分割技術」を活用している。
アプレット領域分割技術とは、SIM内において通信に必要となる情報を書き込む通信プロファイル領域と、アプリケーションなど通信以外の情報を書き込むアプレット領域を完全に分離して管理する技術であり、通信以外の機能をパートナー企業などが独自に実装できるようにしたものだ。
この技術を活用し、SIM内の情報へのアクセスに関して安全性を高めることによって、通常SIMに求められる耐タンパ性(※)を確保している。
今後、IoT向けトライアル提供を2023年6月より開始し、2023年度内に「IoT Connect Mobile Type S」において商用サービス提供される予定だ。
※外部から、端末内部のハードウェアやソフトウェアの構造を不当に解析・改ざんする行為(英語で tamper)に対する耐性のこと。
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