5Gの機能をさらに強化した「ポスト5G」では、超高速、超低遅延、多数同時接続といった複数の基地局機能を、同一の仮想化基地局内で処理することが求められ、ハードウェアリソースを各機能に柔軟に割り当てる必要がある。
従来の仮想化基地局では、各処理タスクやメモリ負荷、中央演算処理装置(CPU)使用率がオペレーティングシステム(OS)に依存していたため、複数の基地局機能をリアルタイムに処理できなかった。
また、あらかじめ必要となるハードウェアリソースを考慮してシステムを構築する従来のハードウェア基地局では、同時に処理が必要な特性の異なるサービスごとに、本来必要のない余剰なリソースを確保していた。
そうした中、富士通株式会社は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業において、5Gの仮想化基地局の演算リソースをソフトウェア上で配置・制御することで、ポスト5Gに対応可能な仮想化基地局の高度化技術を開発した。
具体的には、5G基地局の仮想化基盤上で、演算リソースをスケジューリングするパーティショニング処理技術を開発し、複数の基地局機能のリアルタイム処理を可能としている
また、基地局が処理するユーザ数やトラフィック量に応じて、動作に必要なCPUやメモリのリソースを動的に獲得するハードウェアリソース動的配置技術の開発を行い、最大データ転送量(スループット)や遅延時間(レイテンシー)などのサービス要求条件や運用中の接続端末数、サービス種別を考慮したハードウェアリソースの割り当て制御を実現している。
このようなリアルタイムで柔軟な仮想化基地局の対応により、同時接続端末数を向上させることができる。

また、今回開発した技術を富士通が提供する仮想化基地局に適用することで、従来型のハードウェア基地局と比較して、スループット性能が30%、同時接続端末数が3倍に向上する。
さらに、ネットワーク全体における基地局設置数の削減にもつながり、初期投資から運用までの費用(CAPEX、OPEX)も、ハードウェア基地局と比較して30%以上削減できることが確認されている。
汎用サーバのCPUやメモリなどのハードウェアリソースを基地局処理へ動的に割り当て可能にしたことで、プライベート5G向けの小規模システムや、通信事業者が提供するパブリック5G向けの大規模ネットワークにおいて、仮想化基地局にてシステムを柔軟に構成することができるようになった。

今後富士通は、今回の事業で開発した技術を適用した仮想化基地局を、国内外の通信事業者が提供するパブリック5Gや自治体、企業などが運用するプライベート5G向けに、2023年度下期よりグローバルに提供を開始する。
NEDOは、技術開発をはじめ、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発するとしている。
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