富士通株式会社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の委託事業で、5G基地局の無線子局(RU)において、一つのミリ波チップで最大4ビームを多重できる技術を開発した。
従来は、ミリ波チップ一つで1ビームを生成していたため、RUが大型化し、消費電力が増加するという課題があった。
一方で、ビーム多重を実現するには、ミリ波チップを複数使用する必要があり、実装面積が大きくなってしまうため、RUが大型化して消費電力も増えていた。
今回開発された技術では、4つの入力信号を中間周波数(IF)帯回路によって高密度集積し、4つのIF帯入力信号に対してそれぞれ独立した振幅と位相制御を行う。
これら4つのIF帯信号を周波数変換回路によってミリ波帯へ変換すると同時に合成し、一本化された合成信号を一つのミリ波帯高出力増幅器で増幅することで、最大4ビーム多重を一つのミリ波チップで実現することができる。
今回開発されたミリ波チップを使用することで、実装面積を増やすことなく4ビーム多重に対応できるため、高速かつ大容量に対応した、小型で低消費電力のミリ波RUを実現する。
今回開発された技術を実際の基地局で適用した場合、従来型のRUを用いて4ビーム多重での電波発射を実施した場合と比較すると、2分の1以下の装置サイズで、10Gbps以上の高速かつ大容量通信を実現できる。
また、RUチップ数を削減したことで、RU一つあたりの消費電力を、従来比で30%削減できることが確認された。
富士通は、2023年8月からこの技術を搭載した基地局装置の開発に取り組み、2024年度中に開発したビーム多重技術を適用した、RUの商用展開をグローバルで開始するとしている。
その後、基地局の親局(CU・DU)製品にもビーム多重技術を適応し、2025年度よりグローバル提供を開始する予定だ。
また、通信事業者などユーザの脱炭素化に加え、ネットワークの高度化に向けて継続して技術開発を行うのだという。
NEDOは、今回の技術をはじめ、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発および製造基盤の強化を目指すとしている。
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