ポスト5G向け基地局では、高品質なデータを一度に大量送信する必要があるほか、不測の事態が発生しても平常通りの情報通信ネットワークを維持するため、複数の通信事業者が基地局を共同運用する方式である「基地局シェアリング」の実現が求められている。
しかし、基地局シェアリングを実現するためには、無線部を構成する増幅器の広帯域動作などが課題となっている。
こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、基地局関連技術の研究開発を推進しており、その一環として、2020年10月から三菱電機株式会社と学校法人湘南工科大学は、「基地局増幅器のための広帯域化回路技術の研究開発」に取り組み、高品質データの大量送信およびポスト5G以降の通信インフラを維持する基地局シェアリングの実現を目指してきた。(トップ画:通信インフラを支えるポスト5G通信のイメージ)
そして本日、三菱電機と湘南工科大学は、NEDOの委託事業において、AIデジタル制御機能を備えたGaN増幅器を開発し、動作実証に成功したことを発表した。
ポスト5G向け基地局用GaN増幅器に求められる広帯域動作を実現するためには、従来の1入力型構成ではなく、2入力型構成の採用が有効だが、二つの高周波入力信号を動作周波数や出力電力レベルなどに応じて最適に制御する必要がある。
そこで今回、独自の評価関数に基づき、GaN増幅部への二つの高周波入力信号を、三菱電機のAI技術を活用してデジタル制御した。
これにより、ポスト5Gで求められる電力効率水準を満たす動作効率40%以上を維持し、業界水準のひずみ性能(ACLR)-45dBcと、動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器の動作実証に成功した。
また、開発した二つの入力端子を備えたGaN増幅器の性能を短時間で評価できる高速評価システムの構築にも成功した。
従来、GaN増幅器への二つの入力信号の電力分配比と位相差には、膨大な数の組み合わせがあるため、GaN増幅器の性能評価には時間を要していた。
そこで、市販測定器を制御する独自プログラムを考案し、高速評価システムの構築に成功。評価回数18万2160回に要する時間を、従来の100分の1以下となる30秒以下で完了できることが確認された。
これらにより、無線部を構成する増幅器の広帯域動作に関する課題を解決し、複数の周波数帯域でも、1台のGaN増幅器で低ひずみの高周波信号を出力することが可能となった。
今後三菱電機は、ポスト5G向け基地局用GaN増幅器の実用化に向けて研究開発を継続し、2028年以降の事業化を目指すとしている。
なお、三菱電機と湘南工科大学は、今回の研究開発成果について、2023年11月29日から12月1日までパシフィコ横浜で開催される「マイクロウェーブ展2023」に出展する予定だ。
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