NEC、ネットワークの自動設計・自律制御システムを開発

Beyond 5G/6G時代に先立ち、ネットワークに求められるニーズの多様化や仮想化技術の導入が進み、ネットワーク構成は近年複雑化している。それに伴い運用にかかる負荷も増大している。今後もその傾向は続くと考えられ、運用コストを抑えつつ、複雑なネットワークを迅速に構築することへのニーズが高まっている。

そのため、運用者のインテント(※1)を解釈し、要件に沿ったネットワークを自動で構築・維持することができるインテントベースのAutonomous Networks(自律化ネットワーク)システムの実現が期待されている。

日本電気株式会社(以下、NEC)は、Autonomous Networksの実現に向けたインテントによるネットワークの自動設計・自律制御システムを開発した。

同システムは、インテントに基づいてシステムが運用計画(※2)を自動生成し、さらに通信負荷の変化に応じて元のインテント内容を維持するためにネットワーク構成を自律的に変化させることが可能であり、TM Forum(※3)で定義されるレベル5の完全自律化ネットワークの実現に資する技術である。これにより、様々な要件に対応するネットワークを、運用コストを抑えて迅速に構築することが期待でき、ゼロタッチオペレーション(※4)の実現に近づく。

ネットワーク運用プロセスの比較
TM Forumが定義するAutonomous Networksレベル
また、NECと日本電信電話株式会社(以下、NTT)および株式会社NTTドコモは共同で、同技術を用いた実証に成功したことも発表した。

同実証は、AWS上に構築した5Gモバイルネットワークの実環境に、NTTのインテントからネットワークサービス要件を抽出する技術「インテント抽出技術」(※5)、ドメイン横断でリソース割当を最適化する技術「マルチドメイン制御技術」(※6)、および体感品質(QoE:Quality of Experience)の劣化を事前に予測する技術「QoE劣化検知技術」(※7)と、NECの自律運用技術(※8)、ネットワークスライシング機能(※9)、End-to-Endオーケストレーション機能(※10)を組み合わせたものである。

NTTシステムとNECシステム間では、インテントによるやり取りを行っており、NECシステムでは受け取ったインテントからモバイルネットワークのリソースレベルまでの詳細化を行った運用計画の自動生成と、インテントに応じたネットワーク構成の自律変化を行う同開発機能が動作するインテントベースの運用システムを構築した。

またNTTドコモは、同実証の進捗管理・試験項目作成といった全体統括と、モバイルネットワークへ自律運用ネットワークの適用を鑑みたシナリオの詳細検討を行った。

同システムを用いることで、システム運用者がチャットボットに入力したインテントに基づき、ネットワークスライスごとのアプリケーション、5Gコアネットワーク機能(※11)とそれらを配置するデータセンター、およびネットワーク経路を自動で設計・構築し、要件を満たすネットワークを実現した。また、トラフィック量の増化などQoEの低下の原因となる変化を同システムが事前に検知し、自動でネットワークスライスを増設/再配置することで、QoEを維持できることも確認した。

NEC、ネットワークの自動設計・自律制御システムを開発
ネットワーク運用プロセスの比較
今後、運用計画の生成に掛かる時間の短縮やユーザビリティの改善、およびEnd-to-Endネットワーク全体の運用自律化への対応などの取り組みを進め、あらゆるネットワークの完全な自動化を目指して、研究開発を推進していくとのこと。また、NECはインテントベースのオーケストレータの2025年度の製品化を目指しているとした。

※1 インテント:サービス提供者やユーザがサービスやネットワークに求める要件。
※2 運用計画:ネットワークの状態、その時にとるべきネットワーク構成、その構成に遷移するための自動実行手順を示す。
※3 TM Forum:情報通信業界の国際標準化団体。
※4 ゼロタッチオペレーション:ネットワークの運用をそのネットワーク自体が行う事。
※5 サービス提供者や利用者が自然言語で入力した内容からインテントを抽出する技術。
※6 サービスの品質要件を考慮しながら、ネットワーク・クラウドサーバなどのドメイン横断で全体最適となるようなリソース割当を算出する技術。
※7 ネットワークで測定可能なスループット等の情報からQoEを推定し、QoE劣化を検知する技術。
※8 自律運用技術:インテントに基づいたネットワーク構成の自動設計と、環境変化に応じてインテントを維持する自律制御によって運用者の負担とシステム運用コストを低減することができる。さらにそれらの運用計画を事前に生成し、運用者がネットワークにおける変化を確認した上で運用を開始できる機能も搭載している。これにより、運用計画のブラックボックス化を避け、信頼性を担保した高い実用性を有している。
※9 ネットワークを仮想的に分割し、サービスの要求に合わせた仮想ネットワークを提供する機能。
※10 ネットワークスライスの自動運用を実現する技術。
※11 同実証においてはUPF(User Plane Function:ユーザーデータ処理装置)にあたる。

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