昨今、二酸化炭素排出量の制限や用地不足などを理由に、都市部でのデータセンタ建設が困難となっている地域が多く、郊外にデータセンタを建設せざるを得ないケースがある。
地理的に離れたデータセンタ間を接続する場合、データセンタ間通信における遅延が大きくなるため、低遅延で接続することができないという課題がある。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)と株式会社NTTデータグループは、イギリスおよびアメリカ国内において、NTTグループ保有のデータセンタ間をIOWN APN(※)で接続する実証を行った。
この実証では、イギリスではへメル ヘムステッドのHH2とダゲナムのLON1の2つのデータセンタ、アメリカではアッシュバーンのVA1とVA3の2つのデータセンタといった、約100km離れたデータセンタ間をIOWN APNで接続し、両データセンタ間の往復遅延および遅延ゆらぎの測定を行った。
実証実験の結果、400Gbpsの通信において、両データセンタを1ミリ秒未満の遅延、1マイクロ秒未満の遅延ゆらぎで接続できた。
イギリスでは、通常実証と同程度の距離があるデータセンタ間通信における遅延が2ミリ秒を超えるほか、一般的なレイヤ2スイッチにより構成された従来のネットワークでは、数マイクロ秒から数十マイクロ秒の遅延ゆらぎが発生する。
大手クラウド事業者では、同一のデータセンタとして扱える条件が2ミリ秒以内と規定されており、今回の計測により、一般的なクラウドアプリケーションで想定されている遅延・遅延ゆらぎを下回る結果が確認できたとしている。
この成果は、エンタープライズユーザに対して、リアルタイムAI分析処理や金融分野における郊外型データセンタとして、海外においてもNTTデータグループのデータセンタが活用される可能性を示す。また、クラウド事業者に対しては、都市部と同一拠点相当のデータセンタとしてNTTデータグループのデータセンタが活用されることが期待されている。
今後、NTTおよびNTTデータグループは、金融分野をはじめ、分散データセンタのユースケースとなる分野における顧客との共同実証の実施を検討するとしている。
※IOWN: Innovative Optical and Wireless Networkの略で、ネットワークだけでなく、端末処理まで光化する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とする「デジタル・ツイン・コンピューティング」、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備する「コグニティブ・ファウンデーション」の3つで構成されている。APNは、All Photonics Networkの略で、ネットワークから端末、チップの中にまで新たな光技術を導入することにより、これまで実現が困難であった超低消費電力化、超高速処理を達成する。1本の光ファイバ上で機能ごとに波長を割り当てて運用することで、インターネットに代表される情報通信の機能や、センシングの機能など、社会基盤を支える複数の機能を互いに干渉することなく提供することができる。
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