スカパーJSAT株式会社(以下、スカパーJSAT)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICTエヌアイシーティー)、パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は、HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム局)を模擬した小型飛行機(以下、セスナ機)を活用し、高度約4kmからの38GHz帯での5G通信の実証実験に成功した。
この実験では、地上約20km上空の成層圏を数日~数か月の長期間に渡って無着陸で飛行できる無人飛行体であるHAPSを用いた5G通信ネットワークのフィーダリンク(※1)およびバックホール(※2)回線の実用化に向け、HAPSへの搭載を想定して新たに開発した通信装置(以下、セスナ機搭載局)をセスナ機へ搭載し、自動追尾機能をもつレンズタイプのアンテナをHAPS地上局(以下、地上局)として利用した。
※1:フィーダリンク:HAPSと地上GW(Gate Way)局(HAPSと地上の通信ネットワークを中継する地上局)間の通信。
※2:バックホール:移動通信ネットワークにおける多数の無線基地局とコアネットワークとの間の⾼速⼤容量な情報伝送をサポートする固定回線。

これにより、高度約4km上空のセスナ機と地上局3局との間で、38GHz帯電波を利用した5G NR方式の上空中継による地上5G網のバックホール回線を確立した。
そして、「38GHz帯5G NR方式を用いた上空中継バックホール回線が確立できていること」「地上回線バックホール基地局と、上空中継バックホール基地局間でのハンドオーバが可能であること」を検証するため、エンドツーエンド通信用コアネットワークと通信端末の間のエンドツーエンドのスループットを測定した。
その際、エンドツーエンド通信用コアネットワークから通信端末への通信(ダウンストリーム)および端末から、エンドツーエンド通信用コアネットワークへの通信(アップストリーム)の2方向において測定を行った。

上図のグラフでは、ダウンストリームにおけるスループットの時間変化が描画されている。区間1においては、上空中継によるバックホール回線が確立され、エンドツーエンド通信用コアネットワークから端末にデータが送信されている。
続いて、区間2では地上バックホール回線を介してデータ送信が行われており、区間1から区間2に移行する際、データ通信が途切れずにハンドオーバができている。
さらに、再び上空中継バックホールへ接続を行う区間3への移行時にも、データ通信が途切れずにハンドオーバができている。
以上の結果から、当初の検証目標を達成し、アップストリームにおいても上記の検証に成功したとしている。
その他にも、「HAPS搭載用アンテナ・通信機器の追尾性能の実証」「地上局アンテナ・通信機器の追尾性能の実証」「HAPSネットワークへの回線切り替え・制御技術の実証」「電波伝搬路における降雨減衰補償アルゴリズムの検証」を行い、全ての項目において、当初想定されていた開発目標が達成されていることが確認された。
また、HAPSの実運用を見据え、HAPS実用化や制度化等に資する測定データも取得することができ、加えて技術開発、性能向上に向けた課題等を整理することもできたとしている。
4者は、これらの結果を活用し、HAPSによる成層圏からの5G通信サービス早期提供と、 HAPSを利用した非地上系ネットワーク「NTN」の実現に取り組んでいく計画だ。
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