ソフトバンク株式会社は、成層圏から通信サービスを提供するプラットフォーム「High Altitude Platform Station」(以下、HAPS)と、地上基地局が同一の周波数帯の電波を利用して通信サービスの展開を可能にする、周波数共用に係る研究開発を進めている。
HAPSと地上基地局のそれぞれに専用の周波数を割り当てると、電波の干渉が発生せずに、高品質な通信ネットワークを提供できる一方で、有限な資源である複数の周波数帯の電波を利用することになる。
そこでソフトバンクは、HAPSと通信デバイスとの間で、データの送受信を担う「サービスリンク」向けのアンテナとして、シリンダーアンテナの活用を検討し、特定の方向に対する電波の放射を大幅に抑制して電波の干渉を防ぐ、ヌルフォーミング技術の開発に取り組んでいる。
電波の干渉を防ぐことで、HAPSと地上基地局間での周波数共用技術を実現して、電波の有効利用を図るというものだ。
そして今回ソフトバンクは、HAPS向けのシリンダーアンテナを用いて、2024年4月に北海道にて実証実験を行い、HAPSと地上基地局との間で周波数共用を実現するヌルフォーミング技術の実証に成功したと発表した。
この実証実験では、シリンダーアンテナを搭載した高高度係留気球基地局(以下、上空基地局)の通信エリア内に地上基地局を設置して、上空基地局の通信エリア内にある携帯端末Aと、地上基地局の通信エリア内にある携帯端末Bを、地理的に近い場所に配置した。

そして、上空基地局と地上基地局で同一の周波数帯の電波を利用し、ヌルフォーミング技術の適用有無による、携帯端末AとBの通信速度を評価した。
また、ヌルフォーミング技術の適用有無による通信速度の比較に当たっては、上空基地局からの電波を停止し、地上基地局と電波の干渉が発生しない環境下で、携帯端末Bの通信速度を評価した。
その結果、ヌルフォーミング技術を適用することで、携帯端末Aの通信速度を大幅に低下させることなく、携帯端末Bの通信速度が改善した。
さらに、ヌルフォーミング技術の適用により、両基地局間の電波の干渉を低減したほか、携帯端末Bにおいて、上空基地局の電波を停止して電波の干渉が発生しない環境下と同等の通信速度であることが確認された。

ソフトバンクは今後、今回の実証実験を通して得たノウハウやデータを基に、HAPSの実用化や電波の有効利用に向けた取り組みを進めていくとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。