日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、新たに開発した超長波長帯一括変換技術を適用し、既存のファイバ上で集中光増幅器のみを用いて従来の陸上システムとおなじ中継間隔(80km)を保ちつつ、100テラビット毎秒を超える伝送容量で800kmの長距離光増幅中継に成功したと発表した。
大容量光伝送システムでは、日本の基幹光ネットワークである東名区間(約500km)以上の距離を光増幅中継できることが重要だ。
どこで今回の実験では、国際標準化されている超長波長帯(U帯)用に、新たに開発した超長波長帯一括変換技術を適用し、超長波長帯向け光増幅中継器を実装した。
具体的には、光パラメトリック増幅の1機能である波長帯変換に着目し、L帯とU帯間で波長帯変換が可能なPPLN導波路を新たに設計・作成し、波長帯一括変換器として実装した。
さらに、この波長帯一括変換器と既存機器であるL帯のEDFA・光等化器とのハイブリッド構成のU帯光増幅中継器を構成した。
この中継器では、U帯波長多重信号をL帯に変換し、L帯で利得等化とその損失をEDFAで補い、再度U帯に変換することで、帯域4.5THzの高品質なU帯光増幅中継を可能にした。
また、従来技術でU帯を光伝送システムに適用しようとすると、送受信機や光増幅中継器等の開発が必須だが、既存の材料系では実現が困難だ。
そこで今回の実験では、超長波長帯一括変換技術により従来帯域用の機器やデバイスを利用して、U帯の光増幅中継を実現した。
さらに、既存の光増幅技術と融合することで、従来波長帯のC帯、L帯とU帯の3つの波長帯を用いて波長資源を14.85THzまで拡大し、長距離大容量光増幅中継伝送を実現した。
具体的には、ガウシアンノイズモデルと呼ばれる理論計算モデルを独自に改良し、3つの波長帯の合計伝送容量が最大になるように、実験上の制約も考慮して伝送条件を計算し、光増幅中継伝送実験に適用した。
これにより、この誘導ラマン散乱効果を利用し、従来帯域であるC帯、L帯の信号光から、損失の大きいU帯信号にパワーを遷移させることでU帯において実効的に低損失化し、伝送容量と長距離化を両立する高精度な伝送設計が可能になっている。
加えて、各波長のデジタルコヒーレント信号として、シンボルレート144ギガボー(1秒間に光波形が切り替わる回数)の偏波多重PCS-QAM信号を採用した。
この成果では、NTTが研究開発を行っている高速回路技術に、回路性能を最大限引き出すデジタル信号処理技術を適用することにより、前回成果からシンボルレートを約10%高速化し、より長距離伝送に適した信号を実現した。伝送距離に応じて1波長あたり約600ギガビット毎秒から最大1.3テラビット毎秒までの高速多値光信号を高品質に送受信可能だ。
NTTは、今回の成果について、IOWNおよび6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークにおいて、既存の3倍以上の大容量データをより遠くへ届けられる基盤技術として期待されるとしている。特に、波長資源拡大技術は、波長当たりの高速化(マルチテラビット化)技術と融合することで、伝送容量と距離のスケーラビリティを大きく拡大する技術としても期待されているのだという。
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