映像制作において、撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作を行うリモートプロダクションには、中継車で多くの機器を現地に用意し、多くのスタッフを現地に派遣する必要があった。
また、活用するネットワークが大容量かつ低遅延で、ゆらぎの少ない安定した通信環境である必要があった。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)と株式会社TBSテレビ(以下、TBS)は、映像プロダクションの効率化と高度化へ向け、制作拠点と撮影現場をIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、APN)で接続するリモートプロダクション環境の実現に成功したと発表した。
オールフォトニクス・ネットワークは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入しするものだ。これにより、現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現する。
今回の取り組みでは、実際の放送局であるTBSの赤坂スタジオ、スポーツイベントを開催しているスタジアム、3000km離れた台湾の中華電信股份有限公司(以下、中華電信)の3拠点の映像を、東京都蔵前の制作プライベートクラウドを介して、大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を持つAPNで接続した。
映像はTBSのほかにJリーグ(日本プロサッカーリーグ)より提供され、スイッチャー等の映像制作装置はソニーマーケティング株式会社より、映像伝送装置はNTTイノベーティブデバイス株式会社より、リモートカメラはパナソニック コネクト株式会社より提供され、クラウドCG制作等のサービスは株式会社朋栄のサービスを利用して、実験環境を構成した。
これにより、リモート拠点のカメラ15台分のHD品質の非圧縮・大容量のリアルタイム映像伝送によるリモートプロダクションに成功。リモートカメラコントロールを3000km離れた拠点間で約30msの伝搬遅延で実現した。
また、従来ネットワークでは難しかった生放送要求レベルの安定的な拠点装置間のPTPロック維持を、1μs未満のジッタにより実証した。
さらに、赤坂スタジオにあるTBSの情報番組「ひるおび」と連携して、生放送と同タイミングですべての映像を分岐。3000km離れた台湾、スポーツイベントを開催している埼玉スタジアムの3拠点のカメラ映像を、蔵前にある制作プライベートクラウドを介して、NTT武蔵野研究開発センタ内の制作拠点と接続し、実際の放送局様により実フィールドでのフルリモートプロダクションが可能であることを実証した。
今後は、今回の取り組みでの活用装置および活用技術をふまえた映像制作のフィールド実証を両社共同で進め、映像制作の質の向上、映像制作拠点や撮影現場へのアクセシビリティの確保に貢献するとしている。
また、この基盤であるAPNの技術を、放送局各局および各制作拠点に展開する計画だ。
なおこの取り組みは、2024年11月25日~29日に開催される「NTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRAL」に展示されるとのことだ。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。