IoT機器は、製造時に装着したSIMを機器のサービス終了まで使い続けることが一般的だが、サービスの普及や多様化に伴い、「IoT機器でもエリアに合わせてSIMを選択したい」「機器の製造後に自由なタイミングでSIMを組み込みたい」「機器設置先でSIMをリモートで入れ替えたい」などのニーズが増えている。
これらに対応するには、物理SIMではなく、リモートでeSIMをダウンロードし、かつその都度最適なプロファイルを選択できる、などの機能が必要となる。
こうした中、株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、GSM方式の携帯電話システムを採用している業界団体GSMAが2023年5月に公開したIoT機器向けのeSIM規格である「SGP.32」のユースケースの実証実験を実施し、同規格がIoT機器への導入に有効であることを確認した。
これは、スマートフォンなどに提供されているコンシューマeSIMをIoT機器で利用できるようにするために実施されたものだ。
スマートフォンやタブレットなど、個人向けのデバイスで使われるコンシューマeSIMは、利用者がデバイスの操作画面からeSIMを設定する仕様になっている。
今回実証実験を実施した「SGP.32」は、デバイスを直接操作せずに、リモートでeSIMの操作が行える仕組みを導入しているため、操作画面のないIoT機器でもコンシューマeSIMが利用可能となる。

実証実験では、「設置環境に応じて適切なeSIMをリモートでダウンロード可能なこと」「スマートフォンとのペアリングなしにeSIMが有効化され、IoT機器単体で動作すること」「eSIMダウンロードのための初回プロファイル(ブートストラップ)必須機能の検証確認」を評価した。
その結果、モバイル通信のみの環境でeSIMのダウンロードといった管理操作が可能なことを確認し、同規格がIoT機器へのモバイル通信機能の導入に有効であることを確認した。
また、初回プロファイルに要求される機能を確認しており、今後、製品・サービスとして提供するにあたっての初回プロファイルの設計に役立てていくとしている。
これにより、eSIMを利用するためのユーザインターフェースが実装困難な機器へのeSIMの導入や、多数の機器に組み込まれているeSIMの統合的な管理が可能になる。
例えば、IoTサービス提供事業者が国外でIoT機器を製造する場合、出荷試験では製造国のeSIMを使い通信テストを行ったのち、完成品出荷先の国や地域では、機器に触れることなく任意のタイミングでその国や地域のeSIMに入れ替え通信サービスの利用が可能だ。
IIJは今後、具体的な製品やサービスへの適用に向けて、技術検証を進めていく計画だ。
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