現在、5Gの技術が普及する中で、モバイルトラフィックは増加傾向にあり、基地局や通信設備の消費電力が増加しつつある。
6Gではさらに高速な通信や大量のデータ伝送が期待されるため、その分、消費電力の増大も予測されている。
モバイルキャリアやモバイルベンダにとっては、電力の効率化が重要な課題であり、これまでは、基地局装置の省電力化や、仮想化技術の適用による電力削減などが行われてきた。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を、5G Radio Access Network(RAN)基地局のアンテナ側装置(以下、RU)と制御側装置(以下、DU)間のモバイルフロントホールに適用することで、モバイルフロントホールの動的経路変更ができることを、Nokia、アンリツと共同で実証した。
モバイルトラフィック量は、人の移動や人が多く利用する時間帯により変動する。例えばオフィス街では、昼のトラフィック量が高くなり多くのDUが必要となる一方で、夜はトラフィック量が低いため本来DUは少なくて済む。
しかし現状では、RUとDU間を1対1で固定的に光ファイバにて接続する形態(ダークファイバ)が主流となっており、RUがカバーしているエリアのサービス継続には接続されたDUを稼働させる必要があり、DUを必要数以上に稼働させなければならない場合もあった。
そこで今回、IOWN APNをモバイルフロントホールに用いることで、RUとDU間の1対1で物理的に直結した接続構成から、RUが接続するDUを動的に経路変更することが可能となった。
これにより、モバイルトラフィック量が高いときにはすべてのDU拠点を稼働させ、トラフィック量が少なくなってきたらRUは接続先のDU拠点を切り替えることができる。
不稼働となるDU拠点は、通信装置だけではなく、空調含め拠点全体での電力削減を実現する。
さらに、動的経路変更はRUとDU間の経路に障害が発生した際に、障害部分を迂回させ、運用可能なDU拠点に迅速に切り替えることが可能となった。

実証実験では、動的経路変更時の通信影響を可能な限り少なくするため、RUの収容変更とAPNの経路変更を最適に組み合わせた手順を検討し、その手順にて動的な経路変更が可能であることの検証を行った。
その結果、IOWN APNを用いた2つのモバイルフロントホールにユーザトラフィックが流れている環境で、動的経路変更を行っても8分以内で切り替わり、変更経路以外にてユーザトラフィックに影響がないこと、および切り替わった後でもユーザトラフィックが正常に流れることを確認した。
また、経路変更前後で消費電力が20%程度削減できることを確認した。
この成果により、モバイルトラフィック変動に応じてRUが接続するDU拠点を柔軟に切り替え、稼働するDU拠点の片寄せを行うことが可能となり、不稼働となるDU拠点の通信設備を含め電力削減に貢献するのだという。

今後は、実際の基地局の構成やユーザ数、トラフィックを模擬し、トラフィック予測による自動経路変更判断を組み合わせ、IOWN APNの動的経路変更による電力削減効果の実証実験とサービス影響の極小化に向けて、動的経路変更にかかる時間短縮に取り組むとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。