京セラ株式会社は、異なる方向に異なる周波数の電波ビームを複数同時に生成できるミリ波フェーズド・アレイ・アンテナ・モジュール(以下、PAAM)を開発した。
このPAAMは、384個の二重偏波素子を搭載して、さまざまな周波数で異なる方向に最大8本の電波ビームを同時に生成することができるものだ。
こうした設計のPAAMをサイトに設置することで、複数の事業者が異なる周波数帯域のネットワークを運用できるようになる。
しかし、期待通りの特性を持つRFビームを形成するには、そのすべてのアンテナ素子が完璧に連動する必要がある。
そこで、ローデ・シュワルツからOTAテストできる特許取得済みの技術を活用して、エンジニアがビーム・パターンの適正を検証することも可能とのことだ。
特に京セラでは、最適なビーム・ステアリングとビームの指向性を確保するために、ローデ・シュワルツが提供するCATRベースのマルチリフレクタOTAテスト技術を活用している。
そして京セラとローデ・シュワルツは、バルセロナで開催の「MWC 2025」において、FR2アプリケーションに向けた新しいミリ波PAAM設計の特性評価について紹介する予定だ。
このデモンストレーションで重要な役割を担っているのが、非常に小さな設置面積でOTAテストができるように設計されたローデ・シュワルツのR&S ATS1800M 5G NR多方向ミリ波テストチャンバだ。
そのR&S ATS1800Mテストチャンバは、4台のフィード・アンテナとCATRリフレクタを備え、それぞれが30cmのクワイエット・ゾーン(以下、QZ)をもつソリューションとなっている。
今回のMWC 2025でのデモでは、京セラのPAAMを被試験デバイス(以下、DUT)として、多方向からの4つのQZが重なる中央にあるロバストな3Dポジショナに置く。これで京セラのエンジニアは、4方向からのRFビームの同時受信など、さまざまなテストに取り組むことができる。
このミリ波テストチャンバに加えて、5G NR対応のR&S SMW200Aベクトル信号発生器4台、同じく5G NR対応のR&S FSWシグナル・スペクトラム・アナライザ1台、R&S NGP800電源1台というテスト・セットアップとして構成されており、これらの機器が連携して動作する。
4台の信号発生器それぞれは、R&S ATS1800Mのフィード・アンテナのうちの1台を通じて、送信する5G NR FR2信号をシミュレートする。
一方のDUTは、CATRリフレクタの1台を介して信号を受信する。すべての信号発生器とフィード・アンテナ、リフレクタを組み合わせることで、京セラのエンジニアは4方向からの周波数の違う信号4つをもとに、複雑な受信シナリオをシミュレートすることが可能だ。
なお、受信信号の品質は、京セラ製PAAMに接続したシグナルアナライザで評価できるようにしたとのことだ。
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