5Gは、高速大容量、超多数接続、超低遅延の三つの特徴を持ち、これらの特性は本来トレードオフの関係にある。
また、産業用途に必要な数ミリ秒以下の超低遅延通信に対応した半導体チップは提供されていないという課題があった。
こうした中、株式会社マグナ・ワイヤレス、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科(以下、大阪大学)、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は共同で、超低遅延通信を実現するポスト5G対応半導体チップ(以下、ポスト5Gチップ)をNEDOの委託事業において開発した。
今回開発されたポスト5Gチップは、チップ内の無線信号処理を専用ロジック回路とすることで、従来10ミリ秒以上の遅延時間を0.2ミリ秒以下に短縮し、超低遅延通信を実現した。
これにより、超低遅延が要求される制御信号などにも無線通信の適用が可能となる。例えば、AIサーバからローカル5G無線通信を介して、ロボットをリアルタイムに制御することができるようになる。
また、SDR機能により、遅延または帯域優先、上り・下り通信の比率、無線変調方式といった通信設定を可能にした。これにより、さまざまな用途で最適な無線設定が選択できる。
さらに、信号処理部とプロトコル処理部を分離し、SDR機能を活用することで、ネットワークスライシングの機能を拡張し、ワンチップで複数かつ多種のスライシングに対応した。
今回の活用事例として、超低遅延通信と高速大容量通信が混在したスライシング数3以上での動作を確認した。
なお、複数ベンダーの基地局との相互接続性を確認済みであり、同チップは汎用的に各種無線システムに適用することが可能だ。

今後マグナ・ワイヤレスは、2025年度中に「ポスト5Gチップ」を製品化する計画とのことだ。
3者はさらに、ローカル5Gの通信性能を向上する二つの新無線通信方式も併せて開発した。
一つは低遅延・多元接続5Gアサイン方式で、同一の無線リソース(周波数および時間)を共用するNOMA方式により2台のユーザ端末(UE)の同時接続を実現する。
もう一つは端末スライシング向け画像伝送方式(Deep JSCC)で、この方式は、画像を含む多用途な無線システムにおいて、より高品質な画像伝送と高効率な通信を提供する。
これらの新方式は、「ポスト5Gチップ」のSDR機能を用いて実装することにより、システム構築が可能だ。
「ポスト5Gチップ」の利用用途としては、低遅延・ジッターレスな無線通信によるロボットのリアルタイム制御や協調動作、エッジ負荷の低減とAI活用の拡大、ドローン制御の高度化などが挙げられている。
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