本年6月28日、LINE株式会社は事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2019」を開催した。
同カンファレンスでは、LINEの新サービスやビジョン等が発表された。
冒頭のkeynoteで登壇したLINE株式会社代表取締役 CWO 慎ジュンホ氏(トップ画像)は、LINEの目指す世界観である「24時間朝おきてから寝るまでのすべての生活をサポートする生活プラットフォームになる」という意味を込めた「Life on LINE」を提唱した。
また、その世界観を実現させるために取り組んでいく戦略として、「Offline」「Fintech」「AI」の3つの分野に力を入れていくと述べた。
目次
Offline
OMO導入を推進する「LINE Mini app」
慎氏は「Life on LINE」を達成するために必要なのは今まで使われていたO2O(Online to Offline)の概念だけではなく、OMO(Online Merges with Offline)が必要であると述べた。
O2O(Online to Offline)はWEBサイト上で実店舗で利用できるクーポンの配布や、店舗の地図やセール情報等を告知し、オンラインからオフラインへ送客する、購買行動につなげるための施策を行うマーケティング方法である。
それに対しOMO(Online Merges with Offline)はオンラインとオフラインの区別なく、両方の良いところを駆使し、ひとつのサービスを形成する方法を意味する。
LINE Mini appは、そのOMOを導入することが出来るサービスであり、今までアプリケーション開発をしたことがない人でも、誰でもサービスアプリケーションを作ることが可能であるとしている。
店舗の運営者はクーポン、ポイントカード機能だけではなく、支払い、予約とリマインド、メニュー閲覧などをひとつで行えるアプリケーションを作成できる。
また、慎氏はファッションブランドを例に挙げ、「利用者はアプリで店員と直接メッセージのやり取りをすることでサイズ感などを確認することが可能であり、その場でLINE payで支払いをして購入まで行える。オンラインショッピングでも店舗(オフライン)での購入と同等のサービスを受けることが出来る」と述べた。
Fintech
スコアリングサービス「LINE SCORE」
LINEが目指す「Life on LINE」を実現するためには、パーソナライゼーションをしていく必要がある。
より個人に寄り添ったサービスを提供していくために、LINEはスコアリングサービス「LINE SCORE」を発表した。
LINEスコアは100~1000の数値で表される。
利用者はウォレットタブから登録が可能だ。まず、LINEのその他のサービス(LINE PayやLINE家計簿、広告サービスでの利用傾向など)を元に一次スコアが算出され、その後、生年月日・性別や居住環境等、ライフスタイルに関する15の質問に答えることでスコアが上がる。
スコアの利用方法は、企業連携により金融サービス、シェアリングサービス、サブスクリプションサービスや各種予約システム等で個人に合ったサービスを受けられるようになる、というものである。
連携企業としては、株式会社DeNA SOMPO Mobility、ラクサス・テクノロジーズ株式会社、Airbnbなどが提示された。
今回サービスを開始するにあたり出澤氏は、「スコアリングはLINEによって送信されたメッセージや通話を利用するものではない。プライバシーに配慮して、ユーザーの同意のもと、具体的な数字を直接使用するのではなく、その利用傾向を粒度を荒くした状態で抽出しスコアリングしていく。また、LINEでは個人情報の取り扱いに関して透明性報告書を開示しており、安心して利用していただける環境を作ることに注力している」とプライバシーの配慮について強調した。
LINE SCOREを活用したローンサービス「LINE Pocket Money」
LINE SCOREを使い「個人にフィットしたローンサービス」をコンセプトとした「LINE Pocket Money」を本年夏に提供開始。
パートナー銀行が持つ従来型の信用情報とLINE SCOREを掛け合わせた今の時代に合った方法での審査、LINE Payとの連携でスマホ上での操作が可能となる等、利用に対するハードルを下げたサービス展開となる。
働く世代に寄り添う「LINE証券」
LINE Financialと野村ホールディングスが提供する「LINE証券」が本年秋にサービス開始すると発表した。
出澤氏は、「投資は働く世代にとっては非常にハードルが高い。投資にはまとまったお金が必要である、どう購入したらいいかわからない、仕事中は取引が出来ない、等から使いづらいというペインポイントがある。その中でLINE証券はハードルを取り除くため、使いやすい直観的なUI・UX、1株単位(最小150円ほど、平均して3000円)での取引が可能、夜の9時まで取引が可能、とすることで、働く世代と投資を身近にしていく」と述べた。
アジア4ヵ国で現地金融サービスとの協業を開始する「LINE Smartphone Bank」
日本、台湾、タイ、インドネシアの4ヵ国で、現地銀行を中心にLINE Smartphone Bankに関する協業を開始すると発表した。LINE Smartphone BankはLINE Payと並んで力を入れていく金融サービスとなる。
出澤氏は、窓口が24時間空いていないこと、手続きの複雑さ等、現状の金融機関にあるペインポイントを挙げ、それらを解消していくためのサービスであると述べた。
LINE Pay、メルペイの「Mobile Payment Alliance(MoPA)」にNTTドコモ参画
本年3月26日にLINE Payとメルペイの連携が発表されたモバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」に、新たに「d払い」のNTTドコモが参画すると発表された。
MoPAにより、店舗事業者は、店頭にLINE Pay、メルペイ、d払いのいずれかのQRコードを設置するだけで、3社全てでの決済が可能となる。そのため、導入時の負担軽減や3社分の潜在的利用者を獲得できる等のメリットを受けられる。
利用者にとっても、利用中のサービスで支払い可能な店舗が拡がるというメリットがある。
LINE Payは今回の参画に関して、ドコモの営業リソース活用により決済サービス加盟店の開拓の推進が見込めるとしている。
また3社はMoPAの取組みを通じて、スマートフォン決済事業において問題となっているサービスの乱立、加盟店側の対応負担やオペレーションの煩雑化を軽減し、国内のキャッシュレスの普及促進を目指していく。
AI
AIアシスタント「Clova」他社連携
AIアシスタント「Clova」とリッチモンドホテルを運営するアールエヌティーホテルズ株式会社、ホテル客室ソリューションを提供するブリッジ・モーション・トゥモロー株式会社との協業を発表した。
ホテル客室内にClova搭載デバイスを設置することで、利用者はフロントに電話することなく近くのコンビニを教えてもらえる、音声でテレビや照明などの家電操作を行えるなど、ホテルでのユーザー体験価値の向上を図る。
また、「Clova」はGatebox株式会社と連携し、Gateboxの新商品「Gatebox 量産型モデル」に対し「Clovaアシスタント」との連携、Clova技術の提供を行ったと発表した。
Clova音声チームとの連携で、Gateboxが作成したバーチャルキャラクター「逢妻ヒカリ」のキャラクターの個性や感情を重視した高精度な音声合成を開発。さらに音声合成と会話エンジンを組み合わせるたことで、声優の生声に近い感情豊かな幅広い会話が可能としている。
音声インターフェースを活用した「LINEカーナビ」
トヨタ自動車株式会社との連携で開発したアプリ「LINEカーナビ」を本年夏に無料で提供を開始すると発表した。
アプリ単体でも使用できる他、車載カーナビと連携するSmart Device Linkにも対応している。
LINEカーナビの特徴としては以下の3点があげられた。
- 主要道路は最短で即日~一週間程度で更新
- 走行中の車両から集めたリアルタイムの情報で目的地までのルートの込み具合を把握、走行時間の算出を行う
- 電波が届かない場所での利用も可能
主に最新情報、リアルタイム情報に特化したサービスとなっている。
LINE株式会社取締役 CSMO 舛田淳氏は「運転中のながらスマホによる違反は年々増加傾向にあり、スマホの利用が危険な事態を引き起こすこともある。運転中でも安全に便利にスマホを使用してもらうために、車内での音声インターフェースの普及を推進していきたい」と述べた。
AI技術を外部企業へ展開する「LINE BRAIN」
LINEは、AIアシスタントのClovaなどで培ってきた数々のAI技術を、外部企業に向けても展開していく。
LINE BRAIN事業として本年7月より、チャットボット、文字認識技術、音声認識技術の販売を開始すると発表した。
- チャットボット技術「LINE BRAIN CHATBOT」
- 文字認識技術「LINE BRAIN OCR」
- 音声認識技術「LINE BRAIN SPEECH TO TEXT」
自然言語を理解し応答する技術。高い正答率を誇り、顧客からの問い合わせ対応、社内FAQ対応等に活用が期待できるとしている。
フォーマットの異なる請求書や領収書、申込書等の写真から文字を読み取り、業務効率化を図る。また、運転免許書やマイナンバーカード等の身分証の登録などに活用が期待できるとしている。
人の発話を文字に変換する技術。コンタクトセンターにおけるリアルタイムの音声自動応答や、バッチ処理での長文書き起こしにも対応している。オペレーターの支援、動画メディアの字幕書き起こし、議事録の書き起こし等に活用が期待できるとしている。
また、音声認識技術の精度を高めるために、Dialpadとの協業を発表した。
Dialpadは日本語の音声データを提供し、LINEは日本語に特化した音声認識エンジンを提供する。この協業により、音声認識技術を一般的な電話でも利用できるようになる。
AI自動応答サービス「プロジェクト『Duet』」
LINE BRAINの音声認識・チャットボット・音声合成という要素技術を組み合わせて開発した、電話でのAI自動応答サービス LINE BRAINプロジェクト「Duet」を発表した。
会場では、電話でのレストランの新規予約の応答デモを行った。
舛田氏は「Duet」のデモを行う前に注目して欲しい点として、スムーズな音声合成、ノイズが発生する可能性の高い一般の公衆電話回線での音声認識、曖昧な会話でも文脈から内容を理解し対応するチャットボット、の3点をあげた。
デモでは、一度音声が止まってしまうハプニングはあったもののAI自動応答サービスでの予約を成功させた。
このサービスは現状では、レストランの新規予約、予約変更、キャンセル等に機能を限定して開発を進めている。
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