日本では、高度経済成長期に多く建設された橋梁やトンネルなど社会インフラの老朽化が進行していることから、国や自治体は、社会インフラの定期点検の義務化や点検内容の厳格化を進めている。現在、社会インフラの点検業務では近接目視での損傷確認、写真撮影やスケッチによる記録、報告書作成などがあり、多くの作業時間を要している。また点検技術者も不足していることから、点検業務の効率化に対するニーズはますます高まっている。
富士フイルム株式会社は、医療用画像診断システムで培った画像解析技術などを活用して社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」を開発した。ひびみっけは、サーバーにアップロードされた橋梁やトンネルなどの撮影画像から、複数枚の画像の合成、AIを活用した画像解析による損傷検出、検出結果のデータ化などを自動的に行うクラウドサービスである。まずは「ひびわれ」を対象として2018年4月よりひびみっけの提供を開始し、導入を進めてきた。
そしてこのほど、富士フイルムはひびみっけの機能を拡張した。従来のひびわれに加えて、国土交通省の橋梁定期点検要領で点検対象の損傷として定められ、数が多い「剥離・鉄筋露出」「漏水・遊離石灰(※1)」の自動検出機能を新たに搭載した。詳しい特長は以下の通り。
- 従来の「ひびわれ」に加え、「剥離・鉄筋露出」「漏水・遊離石灰」の自動検出が可能
- 画像合成、損傷の検出結果のデータ集計・編集・出力などの機能を搭載
- 従量課金制の採用により初期投資が不要
点検現場で撮影した橋梁やトンネルなどのコンクリート表面画像をアップロードし、さらにAIを活用した画像解析により、幅0.1mm以上のひびわれのみならず、剥離や剥離後に露出する鉄筋、ひびわれから発生する漏水・遊離石灰・錆汁(※2)を自動で検出することができる。特に煩雑な点検業務を伴う損傷に対応し、社会インフラの点検業務の効率化に貢献する。
また、ユーザーの目的に応じて、ひびわれのみの検出と、ひびわれと剥離・鉄筋漏出、漏水・遊離石灰の検出を選択することが可能なため、補修設計や施工前点検などのシーンで有効に活用できる。
アップロードされた複数画像の合成、検出結果(ひびわれ:ひびの幅・長さ、剥離/鉄筋露出/漏水/遊離石灰/錆汁:各損傷の面積)のデータ集計・編集・出力、CADデータを自動作成する。これにより報告書作成までの作業を効率化するのみならず、描き写し漏れも防止する。
そのほか、オフラインで合成画像を確認するチェッカー機能を搭載しているため、点検現場での撮り漏れを防止する。大量の画像から合成に必要な枚数のみを自動で間引きすることもできる。
月々の利用量に応じた従量課金制のクラウドサービスにより画像をサーバーにアップロードするためのソフトウエアを無料でダウンロードできるため、ソフトウエア購入などの初期投資は不要だ。
これにより、橋やトンネルなどのコンクリート表面の剥離や剥離後に露出する鉄筋のみならず、ひびわれから発生する漏水・遊離石灰、さらには錆汁も自動で検出することができる。また、各損傷の面積を自動で計算できるため、点検現場での損傷の確認・記録から報告書作成までにかかる作業時間を短縮する。
※1 コンクリート内部の水分などとうまく結合できず、単体で残った酸化カルシウムなどの成分。ひびわれにより、コンクリート表面に滲み出す。
※2 コンクリート中の鋼材の腐食による、茶色や褐色の生成物がコンクリート表面に滲み出したもの。
【関連記事】
・富士フイルム、AIを活用した社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」を提供開始
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。