令和2年に発生した国内の労働災害においては、墜落や転落による死亡事故が191件と最も多く、死傷者数は20,997人に上っている。厚生労働省は、労働安全衛生法の改正を行い、2019年2月1日から高所作業で使用する安全帯の規格はフルハーネス型を原則とし、名称を「墜落制止用器具」に改めるなど、安全基準を厳格化した。
こうした中、企業には建設現場における墜落転落災害の撲滅に向けて、より効果的な安全対策を実現することが求められている。
株式会社奥村組と株式会社日立ソリューションズは、2021年7月1日~2022年1月31日の期間において、画像認識AI技術を活用した墜落制止用器具(安全帯)のフック不使用者を自動検知するAIモデルを構築・検証し、十分な性能を有することが確認できたことを発表した。
同モデルは、事前に複数現場で収集した延べ6,000件以上の画像を学習させたもので、建設現場のカメラ映像から親綱支柱や親綱、フックを検出し、フックが親綱にかかっていない不使用状態を自動判定する。今回、埼玉県にある鉄骨建方中の建設現場において同AIモデルの検証を行い、カメラと対象の作業員の距離が15m以内、かつ人や物が重なっていないという条件下において、フック不使用者を90%以上の精度で正しく認識できることを確認したという。
同モデルの検証において、フック不使用者の判定フローの検討・AI判定手法の検討および課題抽出・対応策の検討は両社で実施し、映像データの提供を奥村組、AIモデル構築・精度検証を日立ソリューションズが行った。
両社は今後、2022年夏より同AIモデルにフックの不使用状態が一定時間続いた場合にメールや警報機器で管理者や現場の作業員に通知する機能を付加してシステム化し、2023年から販売を開始する計画としている。なお、この通知機能に関しては、監視カメラおよびパトランプなどの警報装置などの接続作業や、APIを活用したメール通知などの環境構築の事前準備が必要となる予定とのことだ。
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