近年、建設業界では、働き方改革と生産性向上が急務とされているが、建設現場のように多くの人が行き交い、状況が大きく変化する環境において、各現場の作業者の作業内容や時間のデータ化は困難であるという課題がある。
また、従来の一般的な行動解析技術では、人物や物体の関係性を解析する際、人物や物体の視覚的特徴のみが用いられており、認識できる行動や状況が限定的であった。
そうした中、日本電気株式会社(以下、NEC)は、建設現場などに設置したカメラの映像から、複数の人物のそれぞれ異なる多種多様な作業内容をリアルタイムに認識する技術を開発した。
この技術では、人物や物体の視覚的特徴に加えて、人物の姿勢特徴、使用している道具や重機などの物体の種別情報、人物や物体の位置情報、人物の周辺環境の視覚的特徴などの表現形式の異なる多様な特徴の間の関係性を統合的に解析することができる。

これにより、建設現場で行われる「掘削」「転圧」「整地」「コンクリートならし」「コンクリート流し込み」「台車運搬」「鉄筋組み」などの作業内容を同時並行で認識することが可能だ。
さらに、それぞれの作業内容の認識において、どの特徴が重要になるかを深層学習で適応的に重み付けすることで、人の重なりなどにより一部の特徴が検知されない場合でも、他の特徴で補完することができる。
また、多数の人物が密集した場合でも、位置情報を重視して人物と物体の間の関係性を正確に捉えることができるため、多人数が行き交う混雑した環境においても、多種多様な作業内容を高精度に認識することが可能だ。
なお、この技術を活用した建設現場における実証実験を、大和ハウス工業株式会社と共同で、2022年3月から5月に戸建て住宅にて実施している。
その結果、「転圧」「根切・埋戻」「コンクリート打設」「鉄筋組み」などの複数の作業内容を正確に認識し、実際の現場作業者による各作業の作業時間を10%以内の誤差で推定することに成功した。
NECは今後、建設に加えて、製造・物流・小売などの様々な現場作業に対して技術の検証を進め、2023年度の実用化を目指すとしている。
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