厚生労働省は、「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」を策定し、労働災害の防止を図るため、事業者が「切羽監視責任者の選任」や「具体的な肌落ち防止対策」、「切羽監視責任者による切羽作業中の切羽の常時監視」等を講じることが望ましいと述べている。
切羽での作業では、労働者の立入を原則禁止し、機械化を進めているが、発破掘削における爆薬装填、結線等、切羽に立ち入らざるを得ない作業が存在する。
こうした中、株式会社奥村組と株式会社システム計画研究所は、山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害を防止するための「肌落ち監視システム」を開発し、山岳トンネル工事に適用して実用性を確認したと発表した。
肌落ちとは、トンネルを掘削した前方の面から岩石等が落下することだ。今回両社が開発した「肌落ち監視システム」は、切羽鏡面の吹付けコンクリートのひび割れを検出し、肌落ちの予兆を知らせる。
具体的には、切羽での作業中にカメラで撮影した切羽画像から、鏡吹付けコンクリートに発生したひび割れをAIで検出し、肌落ちの予兆を警告する。
AIの教師データは、吹付けコンクリート供試体や鏡吹付けコンクリートなどのひび割れ画像で、これをもとに作成したAI学習モデルを用いることで、86%以上の高い精度でひび割れを検出することができる。
なお両社は、長崎県が発注している道路の改良工事に「肌落ち監視システム」を適用・試行した。
その結果、切羽監視責任者が切羽に極力接近することなく、40~60秒程度でひび割れ検出結果を表示でき、肌落ち監視を補助するシステムとして有効であることを確認したのだという。
今後は、このシステムを現場へ展開し、肌落ち災害防止対策の有効なツールの一つとして活用すると共に、システムの高度化に向けた検討課題の抽出やさらなる改善に取り組む予定だ。
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