配筋検査は、適切に鉄筋が施工されているかを設計図面と照合し、品質的に問題がないか確認する重要な検査だ。
しかし、検査には事前準備から検査後の報告書作成まで多大な時間を要することに加え、施工管理者の知識と経験が必要だ。また、検査不具合やミスがあった場合に、その後の工事に大きく影響を及ぼすことから、検査精度の高い自動化と省力化が求められている。
こうした中、株式会社⼤林組は、鉄筋コンクリート工事における配筋検査の省力化にむけて、ステレオカメラによる画像データと生成した点群データをもとに、AI自動計測技術で計測精度と作業効率を向上させた配筋自動検査システムを開発した。
今回開発されたシステムは、2018年に、同社のオープンイノベーションによる研究開発拠点であるシリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリにて、米国スタートアップ企業や研究機関とともに開発した自動品質検査システムがベースになっている。
システムの構成は、配筋を動画撮影するステレオカメラを搭載した検査パッケージ、計算用サーバ、タブレット端末だ。ステレオカメラで配筋を動画撮影し、切り出した画像データと計算用サーバで生成した点群データを基に、鉄筋径・ピッチをAIによって自動計測する。
鉄筋径の計測には、画像データと点群データを使用したAIによる推定を行い、AIによる推定結果の確度を色分け(推定確度高い:青、低い:橙)で可視化する。(トップ画)
計測結果は、タブレット端末に表示されるWebアプリ上でBIMに入力された設計情報と照合し、最終的に施工管理者が設計通りの配筋がされているかの合否判定を行う。
また、BIMデータを使用するため、検査前データ作成を簡略化でき、検査結果は帳票として自動作成される。
さらに、動画撮影で視点を移動させることで背面の鉄筋を捉えることができ、1回で多段配筋の検査が可能になる。
鉄筋と背景の境界認識技術を強化したことにより、現場の明るさの変化や複雑な配筋状況にも対応し、従来以上の精度で認識できるようになった。約1m奥に配置された配筋でも正確に計測できることが確認されている。
加えて、鉄筋の最外部からコンクリート表面までの長さを示すかぶり厚さを任意の撮影方向から自動計測できるようになっている。
このシステムの実証では、AIが「推定確度高い:青」と回答した比率は91.5%で、そのうち正答率は98.6%であり、「推定確度が低い:橙」を含んだ全体の正答率は94.0%だった。
今後は、このシステムを自主検査に適用し、実績を蓄積するとともに、AIによる推定精度の向上や、ステレオカメラやタブレット端末の小型・軽量化、検査報告書の自動作成機能など、機能向上を進めていくとしている。
また、自社利用だけでなく、同システムおよびシステムを使用した配筋検査業務をサービスとして外販することも検討しているとのことだ。
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