鹿島建設株式会社(以下、鹿島)は、山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」の開発を進行中だ。
こうした中、施工ステップの一つである発破後のアタリ(※)判定の自動化と高速化を実現する「アタリガイダンスシステム」を、株式会社演算工房と共同開発した。
※発破掘削後の地山のうち、設計断面内にあるためブレーカにより除去する必要がある部分
「A4CSEL for Tunnel」は、山岳トンネル工事の掘削作業を6つの施工ステップに分け、各ステップで使用する重機を自動化し、それらを一元管理する次世代の建設生産システムだ。

その中の「アタリ取り」は、発破直後の岩盤が露出した切羽近傍で熟練技能者がアタリを判別し、ブレーカのオペレータに指示を出しながら行うため、技能者が肌落ちなどに巻き込まれるリスクがあった。
そのため、鹿島は2018年1月、アタリの確認作業を技能者による目視から3Dレーザスキャナでのスキャニングに置き換え、アタリを定量的に判別できるシステムを開発した。
これにより、判別者は切羽近傍にいなくてもアタリを高精度に測定できるようになったが、測定者はアタリ部分が示された画面をブレーカのオペレータに見せるために重機に近づく必要があった。
そこで今回開発された「アタリガイダンスシステム」では、ブレーカに搭載した3Dレーザスキャナにより、切羽形状をスキャニングし、点群をデータ化し3Dモデル化した後に、事前に登録されたトンネル設計断面のデータと重ね合わせて数値化することで、高精度なアタリ判定が可能になった。

これにより、従来はブレーカのオペレータと判別者の2名が必要だった切羽でのアタリ取りを、オペレータ1名で行うことができ、アタリを定量的かつ自動で判別できるようになった。

なお、スキャナを振動や飛石から守るため、計測時のみ自動で開閉する防護カバーと10Gの衝撃に耐えることができる免震装置を設置したとのことだ。
鹿島は今後、アタリ判定のさらなる高速化と精度向上を追求し、遠隔操作の精度向上も検討する方針だ。また、山岳トンネル工事の掘削作業における安全性および生産性向上を目指し、6つの施工ステップの自動化開発を進めるとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。