「2050年カーボンニュートラル」を目指す中で、建築分野でもCO2排出量の削減が求められている。全産業のCO2排出量の約1/3を占めると言われるこの分野では、建物新築時の材料調達から施工、使用段階を経て解体・廃棄までに発生する建物のライフサイクル全体のCO2排出量を正確に算定し、合理的な削減プランを検討することが効果的だ。
しかし、ライフサイクル全体のCO2排出量の正確な算定は困難で、専門知識を有する技術者が手作業で行う必要があった。
そこで鹿島建設株式会社(以下、鹿島)は、AIを活用して建物のライフサイクル全体のCO2排出量を正確に算定するシステム「Carbon Foot Scope」(カーボンフットスコープ)を、株式会社ゴーレムと共同で開発した。
「Carbon Foot Scope」は、建築部材に加え、構成部材が数万点にも及ぶ設備機器のCO2排出量も正確に算定できるシステムだ。既存の工事見積内訳書などのデータを取り込むことで、AIが自動で建築部材や設備機器を分類し、所定のCO2排出原単位と紐付ける。

このシステムを用いることで、建物を構成する建築部材や設備機器毎のCO2排出量を正確に把握できるため、より具体的なCO2排出量削減プランの検討が可能となる。
例えば、設計初期段階で製造時のCO2排出量が少ない設備機器を選定していたものの、その後の検討過程において建物運用中のCO2排出量が多く、結果的に建物のライフサイクル全体でみたCO2排出量も多くなることが認識できれば、別の設備機器を顧客に提案するといったことだ。
また、「Carbon Foot Scope」を適用することで、顧客が設備機器を選定する際にCO2排出量が異なる複数パターンを短時間でケーススタディし、合理的で経済的なCO2削減プランを提案することが可能だ。
なお、同システムを施工物件4件に適用した結果、専門知識を有する技術者と同水準の正確性をもって、建物のライフサイクル全体のCO2排出量を算定できることが確認されたという。さらに、中規模物件(S造、地上13階建て)に適用した例では、算定に要する時間を従来の人手による算定に比べ約8割削減できたとのことだ。
また、日本建築学会が定める「建物のLCA(Life Cycle Assessment)指針」や、各種団体が推進する算定ツールにも対応しており、ニーズに合わせた算定結果を提供する。
鹿島は今後、「Carbon Foot Scope」を活用し、用途、構造、規模の異なる様々な建物に適用することで算定データを蓄積し、さらなる機能向上を図るとしている。
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