株式会社安藤・間(以下、安藤ハザマ)と日特建設株式会社は共同で、地質評価AIとCIM(Construction Information Modeling)を実装したデジタルツイン・アプリケーション「GeOrchestra(ジオケストラ)」を開発した。
「GeOrchestraは」、地盤を削孔・掘削する際に得られるさまざまな逐次施工情報から、不可視領域における地質分類を推論するAIと設計CIMを統合し、WEB上の3次元空間で地質分類や施工情報を更新・可視化するアプリケーションだ。
具体的には、削孔に応じて排出されるスライムからAIが地質を解析評価し、解析評価した削孔位置の地質区分を現場全体のCIMモデル内に3次元データとして反映する。これにより、地中の不可視地質構造を関係者間で共有することが可能だ。
なお、削孔スライムに対するAIによる解析から地質評価、評価結果による3次元モデルの作成、モデリング情報の逐次更新までの一連の作業は、クラウド上で全て自動化されている。
そして、新規のスライム情報がクラウドにアップロードされると、自動的に新規データを検知し、AIによる解析評価が数秒程度で完了する。
3次元モデルの空間情報は、ユーザが任意に設定した時間間隔で自動的に更新され、同様に地盤の削孔機械情報も施工進捗に応じて自動的に反映される。
ユーザは、現場単位で設定したユーザアカウントとパスワードを関係者間で共有し、指定のURLへアクセスすることで360°任意の視点で施工情報を確認できる。
また、現場実証として、グラウンドアンカーによる地すべり対策を目的とした国土交通省近畿地方整備局発注の「高原トンネル上部斜面対策工事」において、「GeOrchestra」を適用した。
この工事は、国道169号高原トンネルの亀裂を引き起こした地すべりに対し、斜面の安定化を図るものだ。
最長80mのグラウンドアンカーを798本使用し、交通に影響を与えずに施工を実施するものであり、削孔時の孔曲がり抑制が重要となる。試験施工により、地質ごとの遷移領域での孔曲がりが確認されたため、「GeOrchestra」を導入した。
その結果、先行施工の地質評価結果をCIMにより3次元で視覚化することで、孔曲がりが発生する遷移領域が確実に予見できた。これにより、事前の施工方法の見直しや丁寧な削孔等を促すことで、孔曲がりのリスク回避につながったのだという。
また、不可視の施工地盤内の地質を、専門技術者と同程度の精度で評価が可能となり、現場判断の効率化につながった。
安藤ハザマと日特建設は、「GeOrchestra」が保有するAI・デジタルツイン・IoT連携・自動化機能が、今回現場適用したグラウンドアンカーの工種だけでなく、杭工事や地盤改良工事、トンネルの先行ボーリングなど、削孔・掘削を伴う不可視地盤に対する事前の施工管理への活用・展開が期待できるとしている。
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