超高齢社会に突入した日本では、社会保障費の増大をはじめ、さまざまな課題に直面しており、その解決に向けて医療におけるクラウドサービスやAIなど、ICTの活用を促進している。
一般社団法人 巨樹の会および医療法人社団 東京巨樹の会は、急性疾患や慢性疾患の急性増悪などで緊急・重症な状態にある患者に対して専門的な医療を提供する急性期医療と、病気やケガの治療後、症状が安定に向かっている時期である回復期におけるリハビリテーションを重視している。
機能の回復や日常生活での必要な動作の改善を図るため、患者一人ひとりに合わせたプログラムを用意し、医師、看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士などあらゆる分野の医療スタッフが共同でリハビリテーションサービスを提供している。
今回、巨樹の会および東京巨樹の会、株式会社ビーグル、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、ウルシステムズ株式会社の5者は、プライベートクラウド上で臨床データをセキュアに分析する体制を構築した。
そして、巨樹の会および東京巨樹の会は臨床データを活用し、患者一人ひとりにあわせた治療計画の立案や新たなカウンセリングなど、リハビリテーションプログラムのさらなる品質向上に向けた実証実験をビーグル、NTT Com、ウルシステムズの3社と共同で開始した。同実証実験の内容は以下の通り。
- ビーグルが臨床データ収集システムを提供
- NTT Comがプライベートクラウド上でデータの安全な保管・効率的な分析機能を提供
- ウルシステムズがデータ分析基盤上で分析業務を実施
ビーグルは、巨樹の会および東京巨樹の会に臨床データ収集システム「beagle medica」を提供している。医療スタッフのニーズを聞き取り、効率的な臨床データの収集とその活用を促進するための運用を支援する。また、病院内の電子カルテとの連携を推進することで、多くのデータ利活用を可能にする。
NTT Comは、企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」に巨樹の会および東京巨樹の会が収集した過去3年に渡るリハビリテーションの臨床データをセキュアに保管する。さらに、閉域ネットワークにより物理的に分散させた基盤にGoogle Cloudが提供する「Anthos」の「GKE On-Prem」を構築し、そのコンテナ技術(※)を活用したセキュアなデータ分析機能を提供する。「Enterprise Cloud」上で実現する匿名化機能とデータ分析機能を併用することで、安全かつ効率的な臨床データ分析やAI予測などのデータ利活用をサポートする。
ウルシステムズは、業務システムとテクノロジーに関する知見を活かして、システムの設計・実装を担当する。具体的には「Enterprise Cloud」に「GKE On-Prem」と分散データベースを活用した臨床データの分析システムを構築する。また、臨床データの分析計画立案および分析実務業務全般を実施する。
今後5者は、実証実験の結果をふまえて、データ利活用によるリハビリテーションプログラムの本格導入を進めていく。そして、センサーデータや退院後のヘルスケアデータなどを収集し、データ分析精度をさらに向上させ、リハビリテーションサービスの拡充を目指す。
※ 1つのOS環境でアプリケーションを実行するためのユーザ空間を複数に分割して利用する仮想化技術。
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