増え続けるデータ
総務省の調べによると、日本の移動通信システムの契約数は2019年6月末時点で約1億7,225万に達している。背景にはスマートフォン等の普及があり、これらのデバイスによる動画像伝送等の利用拡大が、移動通信トラフィック(データの転送量や情報量)を急増させている。
今後もデバイスの増加とそれによる容量の多いデータのやり取りが見込まれ、急増する移動通信トラフィックに対応するためにも、高速、低遅延、多数同時接続という特徴を持った5Gに期待が寄せられている。
また、大量のセンサーからのデータがあげられるIoTでも5Gの特徴が活かされると期待されている。
事業者が独自の通信を利用できる「ローカル5G」
今年の4月に総務省は申請があった通信キャリア4社に対し、5G用の電波帯域の割り当てを行なったが、これは主に携帯電話をはじめとする広域の通信だ。
そのため特定の領域のみで利用する5Gにおいては、「ローカル5G」という各事業者や自治体などが独自で5G基地局を立てて通信システムを構築できるようにしたものが割り当てられる予定だ。
通信キャリアは通信を販売する事業者であるが、通信ではないモノやサービスを販売している企業や団体がサービスを構築するためにキャリアの通信では不十分な場合、ローカル5Gを用いて自身で通信を利用できる環境を構築することができる。
例えば5Gを活用して事業を行いたい場所が通信キャリアが網羅していないエリアであったり、サービス提供エリアには入っているが、整備計画が数年後になるエリアなどでローカル5Gは有効だろう。
また、通信キャリアの5Gは公衆無線網であるためデータの漏洩といったセキュリティ面でのリスクや、通信障害や災害などの理由で回線が切れてしまうといったリスクがある。そのためローカル5Gを活用して事業を展開していくという選択肢が重要になってくる。
導入想定場所は医療機関、建築現場、工場、自治体、農業など多岐にわたり、今年の12月から申請受付を開始する予定だという。
新たな価値創造の場
それに先駆けNTT東日本と東京大学は、ローカル5Gを活用し、様々なユースケースを共創できる場として「ローカル5Gオープンラボ」の設立を発表した。
[参考記事] NTT東日本と東京大学、「ローカル5Gオープンラボ」を設立「ローカル5Gオープンラボ」では、オープンに参加企業を募り、多様な産業プレーヤーがローカル5Gを活用し社会実装に向けた先端技術を育成する環境が提供される。
このような場ができることにより、ローカル5Gを導入した際の可能性と課題が具現化し、導入への心理的ハードルが下がることが期待される。
また、ローカル5Gオープンラボで実装することにより見えてきた課題に対して、適切な解決策を考慮することができるだろう。さらに予測していなかったメリットが見えてくれば新たなビジネスプランの創出の場にもなりうるだろう。
そしてこのローカルオープンラボではNTT東日本が2018年6月より提供を開始しているAIやIoT技術の社会実装に向けた共同実証環境「スマートイノベーションラボ」との連携が可能となるという。
このスマートイノベーションラボでは、AIの学習モデル作成に特化したGPUサーバーやストレージの利用が可能で、大学や研究機関などとつながっているSINETや主要なパブリッククラウドと閉域ネットワークで接続することができる。
募集要項の詳細は今後発表されるとのことだが、公募を実施し、実証内容などをヒアリングのうえ決定していくという。ローカル5Gオープンラボは2020年2月より開始予定とのことだ。
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