近年のIoT普及に伴い、ネットワークのクラウド環境やサーバーだけでなく、個々の現場(エッジ)にある機器(エッジデバイス)でもデータ処理を行うことで、通信の高速化やデータ処理の高度化につなげるエッジコンピューティングの活用に注目が集まっている。2035年までに1兆個を超えるIoTデバイスがインターネットにつながると想定されるなか、多くのメリットと同時に情報セキュリティ関連のリスクも高まると見込まれている。
そのような中、大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、ICカードのソフトウエア開発等で培った、外部の攻撃から機密情報を守る耐タンパー技術(※)とセキュアプログラミング技術を応用し、IoT機器等に組み込むセキュアエレメント(eSE:embedded Secure Element)を2018年に開発し、機器メーカーや金融機関等に提供してきた。
eSEは暗号鍵や証明書などを保持し、通信の際に重要情報の暗号化や復号を行うもので、決済端末をはじめ、高いセキュリティが要求される分野で実績がある。
一方、ArmはIoTデバイス自体や取得データ、接続状況などを一元管理するIoTクラウドサービス「Pelion(ペリオン) IoT Platform」を2018年からグローバルで展開している。
そして今般、DNPとArmは協業し、エッジコンピューティング技術とIoTクラウドサービスを連携させた「次世代のIoT事業」を創出するプロジェクトを12月に開始する。同プロジェクトでは、エッジデバイス等に組み込むDNPのeSEと、ArmのPelion IoT Platformを組み合わせた機器メーカー向けIoTサービスを開発する。
これにより、以下のサービスを提供することができる。
- エッジデバイスの暗号鍵や証明書等の重要情報を安全に管理
- デバイスの管理やデータの引き出しが可能
eSEをエッジデバイスの基板に直接実装し、その中にIDや暗号鍵、証明書等の重要情報を保存することで、第三者による改ざんやなりすまし、システム侵入などの脅威から守る。
エッジデバイスに組み込んだeSEとPelion IoT Platformを連動させて、相互認証を行うことにより、各エッジデバイスの管理やデータ通信を安全かつ効率的に行うことができる。
今後DNPは、今回Armと共同開発したプロトタイプを利用したコンセプト実証(PoC:Proof of Concept)を2019年度末までに実施する。その後、PoCで得られた知見をもとに、2020年度より本格的にサービス・製品を販売し、2021~2023年度の3年間で累計10億円の売上を目指す。
※ 暗号鍵や回路の処理プロセス、機器に付属する機密情報などを、外部からの非正規な手段による解析から防護したり、干渉に耐えられる技術のこと。
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