高性能センサおよびアナログICのサプライヤであるams AG(以下ams)と、多種多様な電子機器に半導体を提供する半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下ST)は、セキュアで高性能なNFC通信と制御機能を可能にする両社のNFCソリューションが、ARM社の新しいウェアラブル機器用リファレンス設計に採用されたことを発表した。
STとamsが共同開発したこのNFCソリューションは、STのNFCコントローラ(NFCC)およびセキュア・エレメントを組み合わせたシステム・イン・パッケージ(SiP)であるST54E(GlobalPlatform v2.2準拠)と、amsのboostedNFC技術を採用したNFCアナログ・フロントエンドICのAS39230で構成されている。
このNFCソリューションは、ウェアラブル機器やスマートフォンといった非常に小型のバッテリ駆動機器に最適だ。
・amsのboostedNFC技術は、従来のNFCデバイスでは困難だった、RF信号に適さない環境下での超小型アンテナによる操作を可能にする。両社のソリューションは、超小型アンテナ(100mm2未満)による操作時にも、非接触決済のRF性能でEMVCoの基準を上回る。
・NFCセキュリティに関する全ての国際規格に包括的に対応するSTのSiPにより、ARM mbed Wearable Reference Designは、IoT機器に求められるセキュアな各種決済機能(非接触型決済、自動料金収受、アクセス制御など)を実現できる。
・boostedNFCとNFCCは、パワー・サイクルの詳細設定が可能で、平均消費電力を非常に低く抑えられるため、バッテリを長持ちさせる。
mbed Wearable Reference Designは、高性能なNFCカード・エミュレーションを搭載した機器を簡単に設計できるモデルをウェアラブル機器メーカーに提供する。
また、この両社のソリューションにはSTの開発したNFCソフトウェア・スタックが同梱されるため、特にシステム設計者は作業が簡略化される。このスタックは、ARM社のmbed IoT Device Platformとの互換性を有している。
さらに、このソリューションの高いRF性能は、非常に厳しい操作環境下であっても堅牢なNFC機能を確実にする。このNFCシステムは、アクティブ負荷変調を実装したamsのAS39230のユニークな機能を利用する。これが、NFCフロントエンドの信号伝送を強化するため、約40倍もの大きさのアンテナを使用する従来の非接触型カードと同等以上の「動作空間」(ウェアラブル・リファレンス設計がNFCリーダと通信可能なエリア)を実現する。
STとamsが提供するこのソリューションは、mbed対応のウェアラブル機器向けリファレンス設計に最適化されており、同リファレンス設計のBluetooth(R)とGPS無線からの干渉に優れた耐性を発揮する。
同時に、STとamsのディスクリート製品の高い互換性が、優れた省電力機能を提供する。ST54Eは、NFC通信可能エリアでは、極めて消費電力の低いパワー・ダウン・モードを保持できる。また、AS39230は、超低消費電力のアクティブなパワー・モード(平均電流 : 18μA)を通じて、迅速に電源のオン・オフを切り替える。
両社のソリューションに使われるソフトウェアは、ARM社の技術に基づく低消費電力マイコン向けに最適化されている。モジュラー設計により、ユーザは、機器側で想定されるユース・ケースに応じたモジュールのみをコンパイルできるため、システムが必要とするメモリ容量を低減し、実装面積を最適化できる。
またこのソフトウェア・スタックは、オプションでピア・ツー・ピアおよびリーダ/ライタ機能もサポートする他、機器がNFC通信可能エリアにある場合は、無線通信によるアップデートが可能だ。
ST54Eは、NFC Forum規格に準拠したカード・エミュレーション、ピア・ツー・ピアおよびタグ・リーダ・モードで使用できるNFC対応機器として、あらゆる要件に対応している。また、Common Criteria、EMVCo、GlobalPlatform、Visa、Mastercard、Amex、Discover、および中国人民銀行(PBoC)を含む国際規格への準拠を必要とする機器にも適している。
さらに、mbedウェアラブル・リファレンス設計は、個別の指紋リーダによって、セキュリティ機能が強化される。この指紋リーダはARM Cortex(R)-M4プロセッサ搭載のSTのDynamic Efficiencyマイコンである(STM32F411)を採用しており、指紋画像の処理および照合を実行する。
STのセキュア・マイクロコントローラ事業部 マーケティング・ディレクターであるLaurent Degaugue氏は、次の様にコメントしている。
「amsとSTの包括的なNFCソリューションは、ウェアラブル / IoT機器に、セキュアで優れた電力効率の非接触型の決済、チケット発券およびアクセス制御といった機能を実装する簡単な手法を提供します。また、mbed IoT Device Platformとの互換性により、機器メーカーは、試作品から迅速に実製品へ移行できると共に、独自の付加価値創出に専念することができます。」
ARM社のIoTビジネス マーケティング担当バイスプレジデントであるZach Shelby氏は、次の様にコメントしている。
「ARM mbed Wearable Reference Designは、低消費電力IoT機器の迅速な開発や革新的機能による付加価値創出に専念する機器メーカーに試験済みの設計基盤を提供します。amsとSTのNFCソリューションは、小型機器においてARM Cortex(R)-Mプロセッサとmbed OSが発揮する電力効率を実証しています。」
また、バルセロナで開催されるMobile World Congress(2月22~25日)に、STは、モバイルおよびウェアラブル機器向けの製品・ソリューションを出展する(STブース:7A61)。
amsは、AS39230をはじめとするNFCソリューションを展示する(amsブース:6E20)。
【関連リンク】
・エス・ティー(ST)
・ams
・mbed Wearable Reference Design
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。