現在わが国では人手不足が深刻化し、あらゆる産業で先端技術を活用した業務の変革が求められている。
日本電気株式会社(以下、NEC)は、リモートセンシング技術の一つであるLight Detection And Ranging(以下、LiDAR)を活用した異常検知分析エンジンを開発した。
同エンジンは対象物の外観データを可視化することで異常を検知するものであり、変電設備など異常値に関するデータ学習が困難な設備での活用が期待されている。NECは東北電力ネットワークとともに技術検証を実施し、漏油などの異常を検知できることを確認しており、東北電力ネットワーク宮城管内の変電所において同エンジンを用いた巡視点検システムのフィールド検証を本年10月から実施する。
LiDARを活用することで外観データから異常を検出することができ、人手による工数を削減する技術として設備点検業務をはじめとする様々なシーンでの応用が期待されている。具体的には、LiDARとは、レーザー等の光を対象物に照射し、その反射光を捉えることで、その対象物までの距離や輝度を測定し、対象物の形状・輝度を読み取る技術だ。測定結果は点群データ(※)となり、対象物を可視化することができる。
今回、このLiDARの技術を元に開発した異常検知分析エンジンは、こうして得られたデータに基づき、周辺と異なる輝度、過去データと異なる形状・輝度を分析し、対象物の異常を検知する。また、LiDARを活用した異常検知の特長は、異常値に関するデータの学習・蓄積がなくても、検知が可能な点にあるため、不具合が発生することが稀で異常値のデータを予め収集することが困難な設備での巡視点検を代替する手段として期待されている。
LiDARの現場業務への活用可能性を検証するため、NECは2019年8月より福島県南相馬市の東北電力ネットワーク総合研修センターにおいて、研修用変電設備の異常検知に係る技術検証を実施した。営巣、漏油、がいし破損などの異常を模擬した環境を用意し検証したところ、LiDARから20m以内に設置した模擬異常のすべて(営巣3か所、リード線外れ2か所、がいし破損1か所、漏油5か所)を検知することができた。
※ 点群データ:LiDARが取得するデータの代表的な形式。LiDARが対象物をスキャンした際の各スキャンポイントの座標値と、それに付随する輝度などの情報から構成される。
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