2021年4月には電力の需給調整市場が開設される予定で、再生可能エネルギーや蓄電池などを利用した分散型電源の活用が期待されている。また、2022年4月にはインバランス(計画と実績の差)料金制度に見直されることで、インバランスが発生したときのペナルティがより厳格になるため、電気事業者の間には需要や発電量の予測精度の向上による損失リスク減少へのニーズが高まっている。
電力需要予測や太陽光発電量予測の精度を高めるためには、もとになる日射量、気温、風などの気象データの予測精度が重要となる。
株式会社ウェザーニューズは、気象データ提供サービス「WxTechサービス」において、電力市場向けの気象データセット「WxTech for Energy」の販売を開始した。
同データセットでは、気温、気温EPI、全天日射量(※1)、全天日射量EPI、直達日射量(※2)、散乱日射量(※3)、風向、風速、降水量、天気など、様々な気象要素の予測データをピンポイントで取得することができる。気温、日射量、風速については予測データを提供し、天気については予報精度90%を超えるピンポイント予報が準備されている。
また、気温EPIと全天日射量EPIは、電力市場のニーズに特化したウェザーニューズオリジナルの予測幅データである。例えば、厳冬期の翌朝の気温予測について、最も確度の高い予想気温(例えば1.0℃)だけでなく可能性のある予想気温の最低(0℃、下ブレ予測)と最高(1.5℃、上ブレ予測)を伝えることで、需給のひっ迫時などおいてリスクヘッジの行動が取りやすくなる。
これらの気象データを当日の運用、スポット、週間や月次など各電力取引に必要なタイミングに合わせてパッケージ化されているため、例えば、当日の運用向けには6時間先までのリアルタイム予測を30分毎に生成し、スポット計画向けには数時間毎に72時間先までの短期予測を提供することができる。
さらに、ウェザーニューズでは以前からオンプレミスの環境でカスタマイズした電力需要予測や気象データを提供することで電力需給計画を支援してきたが、今回のサービスはWxTechサービスを用いたクラウド環境での気象データ提供になる。電気事業者はクラウドに保存された気象データをAPIなどで取得できるため、データの閲覧や保存だけでなく需給管理システムなどの既存システムとの連携も容易である。
同データセットの提供にあたり、ウェザーニューズは日射量、気温、風速の予測手法を見直し、新たな「日射量予測モデル」を開発した。
例えば太陽光発電量予測において重要な「日射量」を予測する場合、大気の透過率を推定する際には上空の湿度から推定するのが一般的であるが、同モデルでは独自のAI技術を用いて、上空の湿度や温度などから推定される雲の水分量や風向風速から計算される収束量などを、大気の透過率を推定できる特徴量として選択し、機械学習を行うことができる。
ウェザーニューズが日射量、気温、風速の新たな予測手法について検証したところ、年間を通してMSM(気象庁)の予報より精度が高いことが判明した。また、同社比でも日射量は約15%、気温は約10%、風速は約30%の精度改善が確認された。
なお、同データセットは2ヶ月間までトライアル期間として無償で提供される。
※1 全天日射:地表面が受け取るすべての太陽光を指す。直達日射の水平面成分と散乱日射の和。
※2 直達日射:太陽から直接地上に到達する光のこと。
※3 散乱日射:太陽光が大気中の粒子等により散乱・反射されて 地上に届く光のこと。
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