昨今、自然災害の増加や被害の甚大化、通信環境に対するニーズの多様化により、自治体やインフラ事業者を中心とした様々な業種で、輻輳・途絶しにくい通信手段の確保や各種データ活用による業務の高度化・効率化が求められている。
一般財団法人移動無線センター(以下、MRC)と日本電気株式会社(以下、NEC)は、2017年に新たな無線サービス事業に向けた共同検討の協定を締結し、事業化に向けた準備を進めてきた。
このほど、MRCはLTE技術を用いた新たな業務用無線サービス「MCAアドバンス」の提供を開始した。同サービス開始に伴い、NECとPSCP株式会社は、MRCと連携し新たな業務用無線システム事業に参画したことを発表した。
- 1.耐災害性・信頼性
- 利便性・実用性
- 高セキュリティ・低コスト
同サービスは、900MHzの周波数帯を使い、従来からMRCが提供していたデジタルMCA無線の災害に強いという特長を引き継ぎながら、3GPP(Third Generation Partnership Project)に準拠したLTE技術を採用することで、音声に加えてデータ通信も可能とした。
また、災害時や非常時において、回線が途絶えた場合も中継局を単独運用可能で、公衆網が混雑した際も輻輳の影響を受けないため、安定した無線サービスを提供する。具体的には、局舎も耐災性の高い設計を採用すると共に、非常用発電機の整備により停電が発生しても給油体制と併せて長期間にわたり電力供給を可能としている。
さらに、統制局も東西2か所に分けられ、各サーバー群やバックホール回線についても二重化されており、停電や装置障害の対策を備えた災害に強いインフラ設備として、自治体の防災システムを代替することができるほか、自治体やインフラ事業者による災害対策だけでなく、一般企業のBCP対策として利用することも可能だ。
従来の業務用無線の堅牢性はそのままに、携帯性、操作性に優れたスマートフォン型無線機の操作で、地図上で端末の位置を確認できる指令局、チャット、映像配信等の利便性の高いアプリケーションを利用することができる。
具体的には、同サービスで利用される携帯型無線機は、PSCPが京セラ株式会社、モトローラ・ソリューションズ株式会社と提携して提供するもので、スマートフォン型で防水・防塵性能も保有し、24時間以上の稼働が可能であり、同サービスと公衆網のMVNOのデュアルSIMを実装できるという。
アプリケーションは被災状況を的確・迅速に伝達するための文字、画像、クリップ動画が送れるチャットアプリ(MCAアドバンスチャット)、リアルタイムでの映像配信アプリ(MCAアドバンスライブストリーム)を初期ラインナップとして提供すると共に、今後はミッションクリティカルな業務を担う企業・団体のニーズに合わせた更なるメニューの拡充を計画しているとのこと。
専用周波数による閉域網であるため、秘匿性・セキュリティを確保した無線サービスを提供する。また共同型の業務用無線であるため、これまで広域自営網で対応していた電力、ガス、道路、鉄道などのインフラ事業者の設備投資を低減することが可能だ。
同サービスにおける各者の役割として、MRCが防災・公共分野やBCP(事業継続計画)・業務用分野などへの無線サービスの提供、NECが中継局など無線サービスの通信環境構築、PSCPが携帯型無線機・主要なアプリケーションの提供をそれぞれ担う。
今後3者は、関東、東海、近畿、九州北部地方をカバーする他、札幌、仙台、新潟、広島などの都市のエリアを対象に無線サービスを開始し、2022年3月までに全国に順次エリアを拡大するという。また、自治体やインフラ事業者のみならずより高いBCPレベルを求める民間企業への事業展開を進めることで今後7年間の累計で30万局の無線機展開とそれに伴うアプリケーションの提供を目指し、新たな業務用無線サービス事業を推進するとした。
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