複雑な環境を検知できることで何がわかるのか、ボッシュが考えるガスセンサー×AIとは

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ボッシュ株式会社は、AIで環境をセンシングするMEMSガスセンサー「BME688」を開発した。BME688を使用することで、特定の環境を検知できるようになる。

本稿では、BME688を活用することでどのようなことができるようになるのか、ボッシュセンサーテック ジャパン ゼネラル・マネージャーの日吉克彦氏とアプリケーション エンジニアリング マネージャーである宮地浩輔氏、営業の岩間奈緒子氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

今回、BME688に関する記事を2本立てで構成しており、もう1本の記事では、BME688が技術的にどのようなことができるか紹介している。こちらもぜひ確認してほしい。

※写真左:ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック アプリケーション エンジニアリング マネージャー 宮地浩輔氏、写真中央:同社 ボッシュセンサーテック ジャパン ゼネラル・マネージャー 日吉克彦氏、写真右:同社 ボッシュセンサーテック ジャパン 営業 岩間奈緒子氏

BME688は匂いを検知している?

ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック アプリケーション エンジニアリング マネージャー 宮地浩輔氏
ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック アプリケーション エンジニアリング マネージャー 宮地浩輔氏

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): BME688は匂いを検知しているという理解で良いでしょうか。

ボッシュ 宮地浩輔氏(以下、宮地): 厳密に言うとガスを検知しています。我々サプライヤーの立場からはガスを検知していると言いたいですが、お客様になるだろう利用者の目線から考えると、匂いを検知していると言っても大きく外れてはいません。

例えば、最近、自宅で寿司を握るようになったのですが、熟成鮨を作ろうと思うと、熟成が進んでいるのか、腐敗が始まっているのかの見極めは非常に難しく感じます。そんな時に、このセンサーを使用することで、熟練者の見極めが自宅の冷蔵庫でも実現できるようになるかもしれないと期待しています。

細かな匂いの違いまで検知することができるのが、BME688の特徴です。

ただし、今後の利用方法を考えると、匂いのないガスを検知するということも考えられるので、匂いを検知しているとは言い切れない部分があります。

小泉: 匂いと言ってしまうと、利用シーンを狭めてしまうということになるのですね。

ボッシュ 日吉克彦氏(以下、日吉): 人間が感じられないガスも検知できるという利用シーンもこれから増えてくるのではないでしょうか。犬の嗅覚を再現するということも考えられるかもしれません。

また、BME688を含むソリューションの差別化ポイントは、人間の嗅覚を代替するだけでなく、脳の部分もAI-Studioで代替できることです。

小型で低消費電力な特性を生かしたユースケース

小泉: 想定されるユースケースの中にオムツの状態検知がありましたが、排泄物センサーを開発しようとしている企業の話を聞くと、精度が高いセンサーは価格も高くなってしまうため、あまり使われていないように感じます。排泄物でセンサーが汚れてしまったり壊れてしまったりして、センサーが使えなくなってしまうため、安いセンサーを使い捨てとして使用する方が良いと思われているようです。

高価格で高精度なセンサーを使った排泄物検知の場合、オムツなどに直接付けるのではなく、少し離れたところに設置して繰り返し使った方が良いのではないかと思いますが、BME688は離れた場所からでもガスを検知することはできるのでしょうか。

宮地: センサーであるBME688も、アルゴリズムを学習するソフトウェア「BME AI-Studio」も高精度であることに自信を持っております。ただし、ガスがどのようにセンサーに届くのかが重要です。ガスがしっかりセンサーまで届くと、検知することができますが、ガスは特性上局在化する傾向があります。

例えば、オムツの状態検知を、赤ちゃんがいる部屋の壁にセンサーを設置して実施しようとした場合、ガスがセンサーまで届けば、しっかり検知できます。検知している間、同じガスを測定し続けることが必要です。そのため、なるべくガスの発生している近くで測定した方が精度を期待できます。

BME688は、量産価格であればあまり高額にはならないので、赤ちゃんの体に直接貼り付けるような形の製品にも適応できるのではないかと考えています。センサー1個で検知できれば、小型化することも可能です。

小泉: BME688の価格はどのくらいになるのでしょうか。

ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック ジャパン ゼネラル・マネージャー 日吉克彦氏
ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック ジャパン ゼネラル・マネージャー 日吉克彦氏

日吉: 詳しくはお伝えできませんが、量産できればワンコイン以下になるくらいです。BME688でできることをお伝えすると千円以上の価格を想像されるお客様も多いですが、そこまでは高くならないです。

小泉: 測定するデータが抵抗値という数値データだと、データが複雑にならず、消費電力も少なくて済みそうですね。

宮地: 小型のデバイスに搭載して使用してもらうことを想定しているので、消費電力は小さくなるようにしています。使い方によりますが、平均的には、ミリアンペア単位で動作することが可能です。オムツの状態検知でも、実際の使い方は毎秒測定するわけではなく、5分に1回などの定期的な測定が想定されます。そのような使い方だと更に消費電力を抑えることが可能になると思います。

消費電力を抑えることができるので、山火事を検知するユースケースも考えられています。BME688が搭載されたIoTデバイスを広範囲に設置することで、山のどの部分で山火事が置きているかを検出することができるようになるでしょう。

日本ではあまりイメージが湧かないかもしれませんが、アメリカでは山火事は大きな問題として捉えられています。BME688は温度も測定することができるので、ガスと温度の両面で山火事を検出することができると考えています。

測定や学習が簡単なため、製品開発だけではなく企画にも使用できる

ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック ジャパン 営業 岩間奈緒子氏
ボッシュ株式会社 ボッシュセンサーテック ジャパン 営業 岩間奈緒子氏

小泉: 紹介していただいたユースケース以外には、どんなユースケースが考えられますか。

ボッシュ 岩間奈緒子氏(以下、岩間): センサーを搭載する製品の開発部門の方以外にも、新しい製品を企画するような企画部門やマーケティング部門の方にもBME688を使用してほしいと考えています。

実際、今回お見せしたデモンストレーションのための測定やアルゴリズムの学習は、文系出身の私でも比較的簡単に実施することができました。

デモンストレーションで使用した評価キット「BME688 Development kit hardware」は1万円前後で購入することができます。この評価キットを購入すると、簡単な検討であれば実施することができます。

簡単に検討することができるので、気軽にお試しいただき、我々にはない発想でBME688を使用していただけたらと思っています。

小泉: 気軽に検討ができることで、利用シーンは更に広がりそうですね。IoTデバイスや家電を開発するような電機メーカーだけでなく、匂いや消臭を研究している化学メーカーとのコラボレーションも想像できます。

ボッシュが進める「センサー×AI」

小泉: 先日取材した「BHI260AP」や、今回のBME688もセンサーとAIを掛け合わせた商品だと感じています。ボッシュでは、今後もセンサーとAIの掛け合わせを様々な分野に広げていきたいと考えられているのでしょうか。

【参考】AI搭載センサーで変わる、ウェアラブルの未来 ーボッシュの新MEMS「BHI260AP」

宮地: はい。その部分が、センサーの価値付けができる要素だと感じています。

日吉: センサーはハードウェアですが、ソフトウェアを組み合わせることで最終製品に近付き、付加価値を付けるという狙いがあります。ハードウェアだけだと競争が激しいため、そこにノウハウを載せて差別化していこうという方向で考えています。

小泉: 柔軟なソフトウェアがあることで、センサーでデータを収集したあとの処理や分析が楽になり、製品開発を加速させることができるのではないかと感じました。貴重なお話ありがとうございました。

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