スマートフォンから産業用ロボットまで、幅広く活用されている3Dセンサは、発した光が反射されて跳ね返ってくるまでの時間を測り、対象物までの距離を推定する「ToF方式」の採用が進んでいる。
しかし、自律走行ロボットやドローンでは、数十m先の障害物を検知し、取得した映像から自分の位置を把握する「環境マッピング」機能が必要であり、従来主流となっている「間接ToF方式」の3Dセンサでは、屋外で使用する場合に十分な「外光耐性」が得られないことが、普及の障害となっていたという。
そこで凸版印刷株式会社は、子会社の株式会社ブルックマンテクノロジと共同で、1~30mの範囲で距離を測定できる「ハイブリッド駆動ToF(Time of Flight)方式」(※)による「三次元距離画像センサ(以下 3Dセンサ)」を開発した。
これにより、「間接ToF方式」による3Dセンサの5倍以上遠くまでの範囲で距離の計測が可能となり、障害物を回避するなどの動きをする自律飛行ドローンや自律走行型搬送ロボットなどの、操作性と安全性の向上に寄与する。
また、このハイブリッド駆動ToF方式による3Dセンサは、独自の外光ノイズ除去機能を搭載し、真夏の日中に相当する照度10万ルクスの環境下で、最長20mまでの距離を測定することができる。
さらに、距離の測定と、外光ノイズ除去を1フレームで完結させることで、「測定エラー」の原因となるブレを発生させることなく距離を測ることが可能。これにより、従来機種より約4倍多く、1秒間に最大120枚の距離画像を取得することができる。
加えて、独自の制御法により、他のカメラが発する信号光を、外光と同じように除去することができる。これにより、カメラ同士が干渉することなく、複数のカメラを同時に駆動できるため、最大で256台のカメラを同時に駆動することが可能だ。
今後凸版印刷とブルックマンテクノロジは、新方式によるToFセンサが、自律型移動ロボットや産業機器などに普及することを目指している。
また、この新しいToF方式による距離センサを搭載したカメラの開発も進めており、評価用モデルの提供を2022年12月に開始し、2023年秋の販売開始を計画しているという。
※「ハイブリッド駆動ToF方式」:静岡大学・川人祥二教授により提唱されたToF計測法で、位相差によって距離を計測する「間接ToF方式」をベースに、時間差によって計測する「直接ToF方式」の機能を組み合わせた、新しいセンシング技術。「マルチタイムウインドウ技術」と呼ばれる、複数の短時間ウインドウの組み合わせにより光の往復時間を推定するため、従来の間接ToF方式と比較して、屋外でのセンシング時に問題となる外光ノイズの影響を受けにくいという特長がある。
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