IoTやAIの普及とともに、それらを支えるインフラであるネットワーク技術のさらなる進化が求められている。現在、普及しつつある5Gの次世代の通信規格5G-Advancedや、6Gの検討が進められており、それらの実用化により、5Gのおよそ100倍の情報処理量が見込まれている。
無線基地局とコアネットワークを結ぶ光通信の領域においても、無線通信データアクセス量の増大による伝送量の大容量化が求められる一方で、光の歪などにより、信号の変調速度に限界があり、光1波で伝送可能なデータ容量が限られてしまう課題があった。
また、ネットワーク全体での低消費電力化、CO2排出量の削減も通信事業者にとって大きな課題となっている。
そうした中、富士通株式会社は、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送が可能なデジタルコヒーレント光伝送技術の開発に成功し、実際の光伝送装置として通信が可能なことを確認したことを発表した。この技術を適用した光伝送装置を2023年度上期中に製品化し、グローバルに提供を開始する予定だ。
この技術は、最新の半導体プロセスを適用したデジタル信号処理LSI(DSP)の適用に加え、光伝送装置への水冷システムの導入や、機械学習を用いた光ネットワーク全体のリソースの最適化により、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現しながら消費電力を低減し、富士通従来製品と比較してシステム全体のCO2排出量を70%削減する。
技術の概要
テラビット光伝送システム技術
140Gbaud(信号の変調速度を示す単位)の高速信号を伝送可能とするデジタル信号処理LSI(DSP)と、光伝送に必要な任意の波長に設定可能な光源「狭線幅波長可変レーザ」を適用し、送受信デバイスや光伝送路に発生する光波長の歪を高精度に補償する富士通独自の技術を組み合わせることにより、1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現。
また、光通信においては、一般的に伝送容量が増加すると通信できる距離が短くなる傾向にあるが、今回の技術を適用することで、従来技術と比較して同じ伝送容量で4倍以上の到達距離性能を実現している。
光伝送装置への水冷技術の適用
光伝送装置に水冷技術を適用。冷却効率を向上させ、伝送容量(Gbps)あたりの消費電力が120mWとなる低消費電力化を実現。光伝送装置全体では、空冷方式を採用した従来の装置と比較し、3分の1の小型化・軽量化も図り、輸送時に発生するCO2排出量削減や、使用終了後の廃棄量削減によるCO2排出量削減に貢献する。

機械学習を用いた光ネットワークモニタ技術
機械学習を用いたネットワークモニタ技術により、光ファイバーや光伝送システムなどの光ネットワーク構成要素の状況を自動で高精度にとらえ、分析することができるようになる。これで得られた結果を用いて、ネットワーク構築時のDSPの変調方式や、構成要素の設定に生かすことにより、消費電力を抑えつつ、光伝送装置の持つ伝送性能を引き出したネットワークの構築を可能とする。
プレスリリース提供:富士通
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