新たなマテリアルの創出を行う際には、広範囲な分野において、特性が良好かつ競争力の高い新材料を開発する必要がある。そのためには、多様な元素への対応に加え、材料特性を左右する物質の原子構造、密度や結合状態といった性質をより正確に予測できることが重要だ。
そうした中、株式会社Preferred Networks(以下、PFN)とENEOS株式会社は、原子スケールで材料の挙動を再現して大規模な材料探索を行うことのできる汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis」を共同開発し、2021年7月よりクラウドサービスとして提供を開始している。
「Matlantis」は、従来の物理シミュレータに、材料探索のための汎用的な原子シミュレーションを実現する深層学習モデルPFP(Preferred Potential)を組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化するとともに、領域を限定しない様々な物質への適用を可能にしている。
そして本日、PFNとENEOSは、「Matlantis」のコア技術であるPFPの最新版となる、「v3」の提供開始を発表した。
今回のバージョンアップにより「Matlantis」は、周期表の微量元素を除いた大部分をカバーする72元素に対応。これは、地球上に存在する物質の99.99%以上にあたる。
特に、排ガス浄化触媒や水素吸蔵合金などの用途で使用されるレアアース(プラセオジム、ネオジム、サマリウム)、次世代太陽電池での活用が期待されるハロゲン元素(臭素、ヨウ素)などに新規に対応したことで、今後、温室効果ガスの削減やクリーンエネルギーの開発に、「Matlantis」が貢献すると期待されている。
また、今までよりも高い精度で多様な化学反応や原子構造を再現できるようになったことから、実際に材料を作る前の段階で、材料の特性をより詳細に予測できるようになった。
具体例として、多くの計算のベースとなる有機分子の液体の密度について、多くの分子で実験によって得られた値を、高い精度で再現していることが確認されている。
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