IoTの進展に伴い、ありとあらゆるモノがデバイス化していくようになると、センサ・デバイス化した消耗品をごみとして廃棄する際の環境汚染や、自然現象の詳細な可視化の際に、センサ・デバイスの回収が容易でないなどの課題発生が危惧されている。
そうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)と国立大学法人東京大学(以下、東京大学)は、低環境負荷な材料のみで構成した電池(低環境負荷電池)と回路(低環境負荷回路)を用いて、PoCのためのセンサ・デバイスを作製し、通信信号を生成することに成功したことを発表した。

今回、NTTと東京大学は、貴金属を含まず、かつ、環境経由で人間や動植物に影響を与える恐れのある化学物質群を使用しないという考え方で、7種類の元素(H、C、N、O、Mg、Al、S)のみで構成されている低環境負荷回路・低環境負荷電池を作製した。

低環境負荷電池の高度化を進めるとともに、有機半導体技術を適用した低環境負荷回路を作製し、回路動作を確認。また、低環境負荷回路と低環境負荷電池を組み合わせ、通信信号の生成に成功した。
低環境負荷回路は、有機半導体分野の研究を推進する、東京大学大学院新領域創成科学研究科の竹谷純一教授の研究室との共同研究で、カーボン材料で全電極を構成する有機トランジスタ作製プロセスを開発し、カーボン電極有機トランジスタを用いて、半導体素子構造の1つであるCMOS構造のアナログ発振回路や、情報をデータ伝送に適した信号に変換する回路「デジタル変調回路」を構成している。

低環境負荷電池は、有機半導体で構成した低環境負荷回路を駆動するには、電荷輸送に高い電圧が必要な為、低環境負荷材料として選定したカーボンを電極として適用するための3次元の導電性多孔体構造の形成、および電池の直列化構造による高電圧化について取り組みを行った。
現在、低環境負荷を指向したデバイスに関する明確な定義はなく、社会的コンセンサスが十分でないことから、今回発表された成果を基に広く議論を求め、外部機関・企業等と連携しながら社会実装を目指すとしている。
なお、研究成果の一部については、Scientific Reportsに掲載されている。
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