近年発生した携帯電話網の障害では、全国的かつ長時間に及ぶ通信の混乱が発生している。これに伴い、携帯電話網を利用しているIoT機器や、電子決済端末などの利用が困難になり、社会的な問題となった。
障害時に通信を確保する手段として、異なる携帯電話網に対応した複数のSIMカードを機器に搭載する方法(デュアルSIM)があるが、機器に複数のSIMカードを組み込むためには、SIMカードを取り付けるSIMスロットを複数個用意する必要があり、ハードウェアの設計変更が必要なだけでなく、部品のコストや基板上の実装面積の点でハードルがある。
また、携帯電話ローミングの技術を用いることでも、1枚のSIMで複数の携帯電話網に接続することは可能だ。しかし、ローミング技術では、当該SIMカードにプロファイルを提供するローミング事業者が運用する加入者データベース(HLR/HSS、携帯電話のコアネットワークの中にあり、SIMカード情報を管理するデータベース)が正常に動作しなくなるような障害が発生した場合は、全ての携帯電話網を利用することができなくなる。
そうした中、株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、1枚のSIMカードで複数の携帯電話網に接続可能な「マルチプロファイルSIM」を開発し、IoTソリューションを提供するパートナー企業とのPoCを開始することを発表した。
「マルチプロファイルSIM」は、1枚のSIMカードの中に、IIJおよび別の通信事業者のプロファイル(携帯電話網に接続するための情報)を保持しており、端末機器からのコマンドにより、利用するプロファイルを自由に切り替えることができる。
これにより、通信障害時にサーバとの通信不能を検知した端末機器が、SIMカード内のプロファイルを切り替え、異なる携帯電話網に接続することで、通信を確保することができる。(トップ画参照)
SIMカード1枚で複数の携帯電話網を切り替えて利用できるため、ハードウェアの変更は不要。また、端末機器に搭載されたプログラムから簡易なコマンドを送ることでプロファイルの切り替えが可能なため、ソフトウェアの小規模な改修で既存端末を対応させることができる。
また、それぞれのプロファイルの加入者データベースを独立させているため、片方のプロファイルを管理する加入者データベースに障害が発生している場合でも、もう片方のプロファイルに切り替えて通信を継続することが可能となる。

ローミング接続ではないIIJプロファイルをメインで選択することで、リーズナブルな料金で利用することが可能だ。
今後「マルチプロファイルSIM」は、IIJの法人向けMVNO通信サービス「IIJモバイルサービス」活用ソリューションとして提供される予定だ。また、IoTソリューションの提供事業者と連携したサービス開発・提供も検討しているとのことだ。
なお、「マルチプロファイルSIM」はコネクシオ株式会社が実施するPoCに採用され、2022年10月26日~28日に開催される「第13回Japan IT Week 秋(IoT&5Gソリューション展【秋】)」のIIJブースにて、エッジコンピューティング・ゲートウェイ「CONEXIOBlackBear」の活用事例として参考展示される。
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