日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、プライベート音響空間(Personalized Sound Zone)の構築をめざした研究開発を行っており、その一環で、ごく小さな空間に音を留める新たなスピーカーエンクロージャー設計技術を開発した。
今回発表された技術は、スピーカーを覆う筐体(スピーカーエンクロージャ)の側面位置に複数の穴を適切に開けることにより、単一のスピーカーのみで音を耳元近傍の局所的な空間に留めることができる。
この技術は、スピーカーの前面から放射した正相の音波が耳に届いた際に発生する、耳で反射した音漏れに繋がる音波を、スピーカーエンクロージャーの側面の穴から放射した逆相の音波で抑圧することで、耳元から離れると音漏れが非常に小さくなる。(トップ画参照)
この技術を利用したエンクロージャと通常のエンクロージャを耳に装着した際の音漏れをシミュレーションすると、通常エンクロージャでは耳だけでなく広範囲にわたり高い音圧が観測でき、音漏れが発生していることが確認できる。
一方、今回発表された技術は、耳元では高い音圧を観測しながら、頭部周囲の音圧は低く音漏れを低減していることが確認できる。
また、今回の技術を用いたオープンイヤー型イヤホンの耳元の騒音レベルと、15cm離れた位置に置いた音漏れ測定マイクの騒音レベルを比べると、耳元では80dBを観測しながら、15cm離れた音漏れ測定マイクでは43dBとなり、音漏れを低減できている。
これを日常の周囲の音の騒音レベルと比較すると、耳元では通常イヤホンで音楽を再生する程度の大きさで聞こえていながら、15cm離れた位置では図書館の静けさと同等になっていると言える。
NTTは今後、プライベート音響空間の研究開発を続けるとともに、航空機や自動車の座席、オフィスなど様々な場所での応用を検討していくとしている。
また、オープンイヤー型イヤホンを活用し、直接耳に届くリアルの空間の音に合わせて、イヤホンから再生する音を加えることで、様々な情報を付与する研究開発も行っていくのだという。
今回の技術を活用したオープンイヤー型イヤホンはNTTソノリティから発売され、今後、NTTグループの各事業会社を通して、今回の技術に基づくサービスやソリューションを提供していく予定だ。
なお、今回の技術を利用したオープンイヤー型イヤホンは、2022年11月16日より開催される「NTT R&D フォーラム Road to IOWN 2022」に展示される。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。