5Gでは、ミリ波帯と呼ばれる28GHz帯や、追加割当候補周波数39GHz帯などの高周波数の電波を使用するため、大容量データの高速通信が可能となり、高精細な動画の配信など様々なデジタルサービスが拡大している。
しかし、ミリ波帯では、電波の干渉や漏洩、損失などが起きやすく、通信速度の低下や遅延などの通信品質の問題がある。
現在、電波の干渉や漏洩を低減するために、複数の材料を用いる多層のものや、磁性体などを原料にした電波吸収体が用いられているが、室内空間との調和が取りづらい、厚みや重量により室内設置が難しいなどの課題がある。
そうした中、凸版印刷株式会社は、周波数28~300GHzのミリ波帯において、複数の電波を選択的に吸収する、軽量・薄膜のマルチバンド対応ミリ波吸収体を開発した。
開発品は、波長より小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種で、構造体の周期を二次元配置した人工表面である、「メタサーフェス構造」からなる軽量・薄膜のフレキシブル性のあるシートだ。
これにより、波長1~10mm、周波数30~300GHzのミリ波において、吸収する電波の周波数・帯域幅を自由に制御でき、一つの吸収体で6Gで用いられるテラヘルツ波向けの電波吸収体にも応用するなど、複数の周波数帯を選択的に吸収することができる。
また、表面加工が可能なため、オフィス室内や工場建屋内の天井や壁の装飾に使用できる意匠性付与が可能なことに加え、従来品比べ約96%の軽量化を実現している。
将来的には、本開発品をテラヘルツ波向けの電波吸収体へ応用するための開発を進めていく予定だ。
なお、この開発品は、2022年12月7日〜9日に開催される「第13回フィルムテック ジャパン(高機能フィルム展)」の凸版印刷ブースに展示される。
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