オフライン・オンラインに関わらず、企業が人材評価を行うにあたって重要なのは「個人の履歴書・職務経歴書」である。しかし、海外では個人情報の改ざんが社会問題となっている。なかでも経歴詐称の問題は深刻で、アメリカでは約5人に1人が経歴を偽ったことがあるとする報告もある。
日本国内においても、海外人材を対象とした「日本語能力試験」の合格証明書が偽造されていたり、金銭的なやり取りやコネクションを通じて偽装証明書をブローカーから取得する事例も報告されている。そうした背景から、リファレンスチェックにコストをかける企業が増えている一方、昨今の「個人のプライバシー保護」の観点から採用調査の難易度も増しており、「個人の履歴書・職務経歴書」に関する問題は山積みだ。
ネパールでは、優秀な人材が豊富であるにも関わらず、国内の主要産業が農業と観光等のサービス業に限られていることから慢性的に雇用機会が不足しており、安定した生活や子供の将来のために海外へ出稼ぎに行く人材が年々増加している。そうした海外で経験を積んで帰国する「環流人材」に対し、ネパール政府は生産性の向上や身につけたスキル、知識を活用した起業等を期待しているものの、帰国後のキャリアに結びついていないことも問題視されている。
一方、少子高齢化が進行する日本においては、今後も深刻な人手不足が見込まれている。特にIT業界ではこれまでオフショア開発の中心であった中国やベトナムにおける人件費の高騰や円安の影響を受け、深刻なコストアップが企業の収益を圧迫している。
株式会社PitPaとフォースバレー・コンシェルジュ株式会社は、世界186ヶ国・地域のグローバル人材を対象とする学歴・職歴・スキルをはじめとした人的資本に関わるNFT証明書の発行を随時開始することを発表した。また、2022年12月より、同プロジェクトの第一弾として、ネパールのトリブバン大学と戦略的覚書を締結し、ネパールと日本の両国において、以下の3つのNFT証明書を発行する。
- トリブバン大学等の高等教育機関における学修歴NFT
- 日本企業によるネパール人材に対する職歴証NFT
- 日本企業に採用内定を獲得したネパール人材向け日本語講座の履修証NFT
ネパールの高等教育機関で行われた講座カリキュラムを履修し、単位を取得した学生に対して発行
日本・海外の日本企業により新たに雇用されたネパール国籍の人材に対して発行
ネパール国籍の人材向けに実施される日本語講座を履修した受講生に対して発行
「透明性」と「真正性」の担保が可能なNFTを活用することで、求職者側の主観的な履歴書や中間業者の間接情報ではなく、企業は第三者により立証された職歴情報を元に人材評価が可能になる。求職者側も、大学や企業に証明書の発行や情報開示を逐一求めることが不要となり、双方のコストを削減することで海外人材の受け入れを加速する。
また、国際技術標準化団体のW3Cでは、「VC(Verifiable Credential)」と呼ばれる技術を開発している。VCは、内容の検証がオンラインで可能な自己主権型のデジタル証明書のことで、発行者(Issuer)が保持者(Holder)に対して発行した証明書を、第三者である検証者(Verifier)がオンライン上で検証できる仕組みとなっている。
昨今、学歴や職歴などの個人情報のトークン化について議論される際に、「ブロックチェーン上に個人情報を記録することに抵抗がある」という意見を往々にして見受けられるが、このVCとNFTの2つの技術を活用することで、この課題に対応するとしている。
VCは、不必要な個人情報を検証者に開示せずとも「その情報が正しい」ということのみを検証できる。また「誰に」「どの情報を」開示するかを個人で選択でき、保持者のプライバシーを保護しながら情報の真正性を担保する。そして、保持者が外部に公開したい情報、例えば「前職での功績」や「取得したスキル名」といった情報のみを画像などパブリックに公開される部分に記載し、譲渡不可能なNFT証明書として発行する。
また、NFTを同時に活用することのメリットとして、媒体を超えたポータビリティー(可搬性)に優れている点も挙げられる。例えば、MetaMaskなどのウォレットで管理することで様々なプラットフォームでの活用が可能になったり、コミュニケーションツール「Discord」やweb3プロジェクト管理ツール「Dework」などと紐づけることも可能で、情報の発行元に依存しない形でアイデンティティを横展開できるようになる。
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