パナソニックホールディングス株式会社は、波長数が概ね10以上のハイパースペクトル画像を撮影する技術を、医療や宇宙探索の分野で活用が進む圧縮センシング技術を用いて開発したことを発表した。
この技術により、肉眼では判別できないわずかな色の違いを、従来のカラーカメラと同様の操作性で識別できるようになり、画像分析・認識の精度向上が可能になる。
マシンビジョンでは画像をコンピュータで認識するため、人間が知覚できない情報、例えば連続的な色変化(スペクトル情報)を用いた解析が可能になる。スペクトル情報をもつ画像はハイパースペクトル画像と呼ばれ、マシンビジョンの応用範囲を拡大する役割が期待されている。
従来のハイパースペクトル画像撮影では、プリズムなどの光学素子や、特定の色(波長)の光を選択的に通すフィルタが用いられていた。しかし、これらの方法は光を波長ごとに分けて検出するため、波長の数に反比例して光の利用効率、つまり感度が低下するという物理的な制約があった。
そのため、撮影時には晴れた日の屋外に匹敵する明るさの照明(照度10,000ルクス以上)が必要となり、操作性・汎用性に難があった。
今回開発したハイパースペクトル画像撮影技術では、観測データを「間引く」ことで効率的に取得し、演算処理で「間引かれる前」のデータを復元する、圧縮センシング技術を応用している。
これは、医療現場でのMRI検査やブラックホール観測でも使われている手法だ。複数波長の光を通し画像データを適切に「間引く」特殊フィルタをイメージセンサ上に搭載し、独自のデジタル画像処理アルゴリズムによりデータを復元した。
ソフトウェアが色を分ける機能の一部を担うことで、従来技術の課題であった波長数と感度の制約を突破した。これにより、最高感度のハイパースペクトル画像撮影および、室内照明(550ルクス)下での動画撮影を実現した。
今後はこの技術を活用することで、色情報に基づいて高精度に画像分析・認識を行う新たなセンシングソリューションや、高感度なハイパースペクトル画像撮影技術によるマシンビジョン用途の拡大を、パートナーとの共創も検討しながら目指していくとしている。
なお、この研究成果は、ベルギーの研究機関であるimecとの連名で、英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン版に、2023年1月23日に掲載された。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。