ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、従来より高速・高精度なリアルタイム制御が可能かつ、産業イーサネット通信のEtherCATに対応する産業用MPU(マイクロプロセッサユニット)「RZ/T2L」を発売、量産を開始した。
RZ/T2Lは、上位製品であるRZ/T2Mのハードウェアアーキテクチャを継承しつつ、成長著しいEtherCAT通信に重点を置いている。これにより、ACサーボモータなどに要求される高速処理や高いリアルタイム性を実現しながら、RZ/T2Mに比べ最大50%の小型化を図った。RZ/T2Lは、従来のファクトリオートメーション(FA)分野だけでなく、EtherCATの活用が進む医療機器やビルディングオートメーション(BA)など幅広い分野のリアルタイム制御に適するとした。
また、CPUとして最大動作周波数800MHzのArm Cortex-R52と、イーサネット通信用に市場実績のあるBeckhoff製EtherCATスレーブコントローラを搭載した。全てのRAMは産業用で求められるECC(エラー訂正)機能付きとなっている。CPUに密結合した大容量メモリ(576KB)により、キャッシュメモリの使用で起こる実行時間のブレを低減し、確定的な高速応答処理を実現する。
角度センサ用のマルチプロトコル・エンコーダ・インタフェース(I/F)や、ΔΣインタフェース、A/Dコンバータなどの周辺機能も搭載されている。これらをCPU直結の低遅延専用(LLPP)バスに配置したことにより、従来より高速かつ高精度なリアルタイム制御を実現する。
さらにRZ/T2Lは、ルネサスとして最もハイエンドなモータ制御用MPU「RZ/T2M」のCPUや周辺機能、内部バスなど、同じアーキテクチャを採用しており、RZ/T2Mと同等の高速、高精度なモータ制御が可能だ。また、RZ/T2LのFlexible Software Package(FSP)やソフトウェア開発環境はルネサスのRZファミリMPUやRAファミリMCUで使用されているものと互換性があるため、ソフトウェア資産の流用が容易となる。これらにより、ユーザがスケーラブルな製品展開をする際の開発工数とコストを削減する。
産業機器では、機能安全を実現するための処理がますます増大している。そこで、高性能なRZ/T2Lを機能安全マイコンとして使用することにより、多くの機能安全処理の実現が可能だ。ルネサスは、自己診断ソフトウェアや、二重化システムを実現するSIL3 システムソフトウェアキットなどを2023年中に提供するとしている。これらを使用することで、ユーザは機能安全システムの開発期間や工数の削減が可能だ。
また、RZ/T2Lはセキュアブート、セキュアファームウェアアップデート、JTAG認証、ユニークID、暗号アクセラレータなどの各種セキュリティ機能をサポートしており、ユーザのプログラムの流出や改ざんのリスクを低減する。ルネサスは、セキュリティソリューションとしてセキュリティソフトウェアパッケージを2023年5月より提供する。
RZ/T2Lの発売と併せて、ルネサスは、RZ/T2LとパワーマネジメントIC、フォトカプラ、ΔΣモジュレータ、EEPROMなどの様々なルネサスのデバイスを組み合わせ、モータ制御とEtherCATを統合したACサーボソリューションを提供する。同ソリューションのリファレンスデザイン、ガーバーファイル、サンプルプログラムコードを提供することにより、ユーザの製品開発を加速させる。
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