株式会社構造計画研究所は、独立行政法人 国立高等専門学校機構 広島商船高等専門学校 商船学科 加藤由幹助教との共同研究を通じて、DIC技術に圧縮センシングと呼ばれるデータサイエンス技術と特殊な撮影方式、およびその数学モデルを組み合わせた新手法であるCompressed Sensing DIC技術を開発した。
圧縮センシングとは、少数のデータから、より複雑な情報を抽出するデータサイエンス技術だ。MRIなどの医療機器分野で用いられているほか、電波天文学の分野におけるブラックホールの可視化などでも実用化されている。
この技術と既存のDIC技術を組み合わせることで、低速度の撮影画像から高速度の情報を復元するCompressed Sensing DIC技術を開発し、低速度カメラを用いた高速現象の振動計測を実現することに成功した。
これにより、従来の課題であった、解像度と撮影速度のトレードオフを解消し、高解像度かつ高速な画像振動計測が可能になった。
この技術は特殊な専用のハードウェアは必要なく、一般的な小型・軽量カメラに、既製品の信号制御装置とストロボ光源を追加することで、ソフトウェアで高速な振動計測を可能にする。
なおトップ画右は、この技術により、約2kHzで振動する板の動きを10fpsのカメラで可視化した様子だ。(900倍拡大表示)
将来的には、超高解像度カメラを利用した超高分解能な振動計測だけでなく、低価格カメラを利用した画像振動モニタリングシステムの実現も期待されている。
現時点では、1200万画素の単眼またはステレオカメラを用いた10fps(1秒間に10枚撮影)の撮影条件で、10μm以下の微細な振動(参考:髪の毛は 40μm程度)に対して、撮影速度を超えた3000Hz超の振動が計測できることを、実験とシミュレーションで実証している。
構造計画研究所は、この技術が、製品の振動に対する特性を正確に把握する必要がある自動車業界に向けた、新たな振動分析ソリューションになりうるとしている。
今後は、電力、航空宇宙・防衛、工場設備、ロボットなど他の業界への展開も視野に入れ、引き続き学術界との綿密な連携を図りながら共同研究および事業化に取り組んでいくのだという。
なお、この共同研究の成果は、オランダ エルゼビア社の論文誌「Mechanical Systems and Signal Processing」に掲載されている。
また、一般社団法人 日本機械学会が主催する「Dynamics and Design Conference 2022」において、2022年度機械力学・計測制御部門 部門一般表彰 オーディエンス表彰を受賞している。(トップ画左:「Dynamics and Design Conference 2023」での表彰式の様子 左:構造計画研究所 綿引壮真氏、右:広島商船高等専門学校 加藤由幹助教)
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