近年では、離れた場所に小規模な太陽光発電所を開発し、複数の発電所をまとめて一つの発電バランシンググループ(発電BG)として電力取引する、低圧・分散型太陽光発電のバルクスキームを採用する電気事業者が増えている。
そこで、株式会社ウェザーニューズは、電力市場向けの太陽光発電量予測データ提供サービスを拡充し、小規模な太陽光発電所の発電量をまとめて予測する、太陽光バルク向けの発電量予測データのAPI提供を開始した。
このサービスは、電力取引に適した30分毎の太陽光発電量の予測データを、72時間先まで提供するサービスだ。
1kmメッシュの高精度な日射量予測や発電所の情報(発電所の位置情報・ソーラーパネルの容量・方位角・傾斜角など)を活用し、電力取引に適した30分毎の太陽光発電量の予測データを、発電BG単位で提供する。オプション追加で、グループ内の個別地点の予測を個々に確認することも可能だ。
予測方法は、発電所の情報と高精度な1kmメッシュの日射量などの気象データから太陽光発電量を予測する「物理モデル」と、過去の発電量実績データと気象データをAIで学習させることでさらに高精度に予測する「統計モデル」から選択することができる。

「物理モデル」に必要な発電所の情報とは、発電所の緯度経度やソーラーパネルの容量、方位角・傾斜角、PCS(パワーコンディショナー)出力などだ。
例えば、基本的にソーラーパネルは真南に向けて傾斜角10〜30度で設置されていることが多いが、緯度による太陽高度の違いや方位角の違いなどの設置環境が発電量に影響する。
このような、設置環境やソーラーパネルの仕様の違いを予測に反映する。発電所の情報を入力することで予測データを取得できることから、これから新設する発電所でも運用開始と同時に活用できるというメリットがある。
一方、「統計モデル」は、過去数年分の発電量の実績データが必要になるが、発電所の緯度経度や発電量実績、当時の気象データをAIで学習させることで、「物理モデル」より高精度に予測することが可能だ。
このため、発電量の実績データが豊富にあり、稼働状況やメンテナンス状況の履歴情報が整っている場合には、「統計モデル」を推奨している。
「太陽光バルク予測」の精度に関しては、2023年1月に日射量予測モデルの雲透過率の機械学習の設計を見直したことで、30分毎の日射量の予測精度をMSM(気象庁の気象庁メソ数値予報モデル)より、約10%向上させている(2023年1〜9月)。
また、2023年に開発された10分毎の1kmメッシュ日射量予測「日射量ナウキャスト」も、30分毎に太陽光発電量予測モデルに取り込んでいる。雲の移動を学習させた「AI日射量予測モデル」を用いることで、10分毎の日射量の予測精度はMSMより、約14%向上している(2023年1〜9月)。
データは、クラウドを経由してAPIで提供するため、システム連携が容易だ。また、今回電気事業者が発電所の情報をAPIで追加・更新できる機能も追加しており、発電所が増えた場合においても、最新の予測データを取得できるようになった。
なお、データは専用ウェブサイトからCSVファイルでダウンロードすることができるほか、サービス導入前に予測精度の検証や収益のシミュレーションも可能だ。
シミュレーションの評価結果は、ウェブでダッシュボードから確認することができ、予測の発表時間毎(リードタイム毎)の精度を比較することができる。
また、事前に太陽光発電量の売電収支を簡易的に計算することも可能。これまでにウェザーニューズの発電量予測を使用してる場合、予測値(計画値)と実績値の誤差(インバランス)がどのようになっていたか、過去にさかのぼって検証する。
収益への影響は、発電量予測を活用した市場収益に、インバランス料金を考慮した「実際の収益」と、予測誤差がない「理想的な収益」を比較して評価を行っている。

ウェザーニューズは、太陽光発電量予測データの提供を通して、FIP制度を利用した市場売電のほか、コーポレートPPA(電力購入契約)や自己託送による再エネ供給事業をサポートするとしている。
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