京セラ、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の基礎技術を開発

京セラ株式会社は、電波(マイクロ波)の放射を集中させる技術(ビームフォーミング技術)と、電波の伝搬環境に応じてリアルタイムに電波放射を追従制御する技術(アダプティブアレー技術)を融合し、5.7GHz帯における「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」を実現する基礎技術を開発したことを発表した。

この技術は、京セラの、電波の制御技術を活用し、高速追従する電波制御と高精度な電波制御を同時に両立させ、電波をコントロールすることが特長だ。また、高効率に電波を電力に変換する技術も有している。

具体的には、電波を放射したい方向へコントロールするビームフォーミング技術により、電波エネルギーを集中制御することが可能だ。

また、電波の伝搬環境に応じた指向性制御技術(アダプティブアレー技術)を適用して、電波制御を高速追従することにより、移動体にも安定的に電力供給することが可能となる。

京セラ、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の基礎技術を開発
電波の伝搬環境に応じた指向性制御技術(アダプティブアレー技術)

この技術は、アンテナから放射される電波を電気的に制御するため、機械的な消耗や故障のリスクを排除することができる。

さらに、壁などの反射を効率的に利用し、ビームフォーミング技術と同時に電波を放射したくない方向へ電波放射を抑える「ヌルステアリング技術」を活用することで、電波の指向性を制御する。

また、電波放射を抑える範囲をコントロールする独自のヌル広角化技術により、人体や他の無線システムに影響を及ぼさないよう電波放射を制御することが可能となっている。

加えて、ビームフォーミング技術をはじめとする独自の電波制御技術と、交流のマイクロ波から直流電流へ変換整流する独自のレクテナ回路技術の組み合わせにより、電波が持つエネルギーを高効率に電力へ変換している。

この技術を、電波を介して電力供給するワイヤレス電力伝送システムに適用することにより、スマートフォンやドローンなどの移動体にも安定した電力を伝送できるようになる。

なお、この技術を5.7GHz帯を利用した空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムに適用したところ、移動体デモ機のモータが駆動することを確認し、さらに、デモ機の移動に追従しながら安定的に電力供給することが確認されている。

また、直接見通せない場所に対しても、電波の反射を利用して電力供給することが確認された。

なお、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、2023年10月17日~20日にかけて幕張メッセで開催される「CEATEC 2023」に出展する。会期中、京セラのブースにて、実機を使ったデモンストレーションも行う予定だ。

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